主に若い人が使う言葉で「○○あるある」という表現を聞く。ありがちなことを言うのだが、それでいけば阪神は「野球あるある」にはまった形だ。大量得点で勝った次の試合は点が取れずに負ける-。虎党から「昨日の2、3点、きょうに取っとんかいな!」とヤジられるパターンだ。

もちろん常にそういう展開になるわけではない。はまったときのイメージが強いので「やっぱり」となる。プロ野球に得失点差はないので20点差でも1点差でも勝ちは勝ち、負けは負け。今更ながら思う。

この日、う~んと思ったのは7回だ。ヤクルト2番手・梅野雄吾の不調につけ込み、1死満塁の好機をつくった。近本光司に打席が回ったところでヤクルト・ベンチは左腕・長谷川宙輝を投入。その長谷川相手に近本は左飛を打ち上げてしまった。

ここ一番でポップフライ…というのは勝てないときの阪神でよく見る光景だ。「負け阪神あるある」とでも言おうか。近本ならゴロをたたきつければ何とかなるのでは…と期待していたので少し残念だった。

そう思って振り返ると、この試合、阪神は内野ゴロが少なかった。2回、近本の一ゴロ。6回に木浪聖也が当たり損ないの捕ゴロ。8回まではこれだけ。9回、抑えの石山泰稚を相手に2つの内野ゴロがあって計4つ。飛球を打ち上げたり、三振が多かった。

前日は大勝。この日も長打を狙ってバットが下から出ていたのでは…などと素人が言う気はないが大勝の翌日に“スミイチ”で負けたのはやはり情けない。

前回、20得点で勝った18年9月16日のDeNA戦(横浜)の翌日は同戦で4-6で負けている。4得点が少ないかどうかは判断が難しいところだが。

昨年の今ごろ、東京ドームで巨人に大敗したとき、当時の打撃コーチ・浜中治と話した。当時も4番だった大山悠輔のスイングが小さいような気がしたので「どうせ大敗なら一発狙えばいいのでは」と言った。浜中はこんな話をした。

「点差がついたから長打を狙うということはないですね。打撃なんて一瞬で崩れてしまうものなんで。自分もそうでしたし」

しっかりとつくってきたものが一瞬で崩れる。打撃はこわいということだ。言うまでもないことだが、毎日、毎試合、新たな気持ちで真摯(しんし)に取り組んでほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ヤクルト対阪神 6回表阪神1死満塁、近本は左飛を放つ(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 6回表阪神1死満塁、近本は左飛を放つ(撮影・加藤哉)