連夜の快勝だ。連日の3番起用となった陽川尚将が殊勲の逆転3ラン、ボーアもまた本塁打と虎党にはこれ以上ない勝利だろう。こうなれば、甲子園に足りないのは夜空に響き渡る「六甲おろし」の大合唱だ。こればかりは観衆5000人の上限がある間はあきらめるしかないのだが。

中日戦と言うことで少し昔話をしてみたい。01年オフに中日から阪神の監督になった闘将・星野仙一はあるとき兵庫・芦屋市にある行きつけの喫茶店で居合わせた中年女性ファンにこう言われた。

「星野さん! 甲子園で勝って私らに思いっ切り『六甲おろし』を歌わせてや! 頼むで!」

星野は笑いながらこう応じたという。「何を言うてるんや。あんたら、勝手にいっつも大きな声で歌っとるやないか?」。

すると女性はこう返してきた。「何言うてんのよ! 最近は全然勝ってないし。せっかくの名曲を全然、歌われへんねんで!」。

このとき初めて星野は知った。甲子園での「六甲おろし」は勝利の凱歌(がいか)であるという事実を。試合に勝たなければ歌えない。中日で現役、監督を務めていたときはまったく気付かなかった。そこから「それなら歌わせたろやないか」と決意。03年の圧勝につなげるモチベーションになったという。その喫茶店で星野自身から聞いた。

言葉通り、03年の阪神は甲子園で強かった。成績は46勝15敗。貯金35で勝率は7割5分4厘だった。もちろん50年以降、甲子園での勝率としては最高だ。

そして今季、阪神は甲子園で強い。この勝利で13勝6敗1分けの貯金7になった。指揮官・矢野燿大は昨年、甲子園で39勝29敗1分け、貯金3の成績を残した。その前年は甲子園で借金18という厳しい成績に終わっていたのでそこは虎党もホッとした部分だろう。

その流れを今季も続けている。甲子園では残り36試合。これを例えば26勝10敗などのハイペースで進めていければ勝率は03年以来の7割超えとなるのだが…。

もちろん、どこまで書いても皮算用だ。それでも甲子園で勝つのは楽しい。タテジマではないデザインのビジターユニホームで苦しんでいるだけに余計そう思ってしまうのか。10月に、もしも、観客制限がなくなっていれば、そこで「六甲おろし」を絶叫したいと思っている虎党は少なくないはずだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 お立ち台でそれぞれお得意のポーズを決める、左からガルシア、陽川、ボーア(撮影・前田充)
阪神対中日 お立ち台でそれぞれお得意のポーズを決める、左からガルシア、陽川、ボーア(撮影・前田充)