「巨人にマジック点灯させてしもた記念日」か。ゴロが悪いか。「最後の戦い」と覚悟し、東京ドームに乗り込んだ阪神だが逆転負け。首位巨人の「M38」を許した。無念である。

今の世の中、中高年が昔の話をするのはよくないらしいが、どうしても思い出す。17年前の9月15日は闘将・星野仙一の下、阪神が優勝を果たした記念日だ。長く続いた“ダメ虎状態”にあきらめの境地だった虎党は歓喜に震えた。虎番記者キャップだったこちらも自然に涙が出た。

そして昨年だ。就任1年目だった指揮官・矢野燿大にとっては屈辱の日だ。今回と同じ東京ドームでの巨人戦で負け、優勝を逸することが確定した「敗戦記念日」となったのだ。

今季、この試合。やはり1つのポイントは2点を追う7回だろう。途中出場の小幡竜平が代わったばかりの左腕・高梨雄平から遊安を放ち、この日、2アーチの近本光司が四球を選んで無死一、二塁。いい流れが来た。そして矢野が最近切ったカード「2番梅野」に回った。

しかし足を使った作戦は失敗。1点もかえせなかった。これで意気消沈。敗戦となった。高梨がいまひとつ調子が出ていなかっただけに勝負を焦らなくても…という見方もあるかもしれないが、そこは真剣勝負。矢野にとっても“大ばくち”だったはず。それに負けたのだから“外野”からは何も言う気はしない。

プロの試合で意味はないのは承知の上で書くが、今季ここまでの東京ドームとは違って“善戦”だったと思う。先発・高橋遥人は序盤、懸命に投げた。打線もずっと抑え込まれていた菅野智之に対し、必死で向かっていった。

それでも勝てなかった。勢いは当然として攻撃、守備、作戦、すべての面で巨人とは差があるということを思い知らされた試合になった。これが現実だ。

「2年、いやそれは無理でも3、4年に一度は優勝して、ファンを喜ばせたいやないか。あんなに応援してくれてるのに。そう思わんか? ええ? オレは思うぞ。ホンマに…」

星野と最後に長く話したとき、闘将はコーヒーをお代わりしながらしみじみとそう話した。それも今季は苦しくなった。それでも虎党は応援はやめないと思う。それに報いるには何をすべきか。言うまでもない。最後まで懸命に戦うこと。それしかないのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)