指揮官・岡田彰布の真骨頂を感じたのは4回だ。先頭の梅野隆太郎が四球で出塁した。ここで岡田は次打者・木浪聖也に犠打のサインを出す。木浪はこれをキッチリ投手の前に決めて、1死二塁に。続く9番・西勇輝は三振に倒れたものの1番・近本光司が右中間を大きく破る適時三塁打を放ったのだ。
それにしても。7番打者が出塁したところで犠打というのはプロ野球の作戦としては、相当、堅いものではないか。試合も2点リードしている場面だ。1死二塁にしても、まず打席が回るのは投手である。しかし岡田に迷いはなかった。試合後、その部分を聞いただけで「立て板に水」という感じで話したのである。
「正解やろお~? せっかく四球選んだのに打たしてゲッツーじゃ何の意味もないからなあ。まあ西勇があそこで二ゴロでも打ってくれてたら、なお、よかったんやけどな。まあ、あそこは近本勝負よ。(外野)前、来とったしな」
頭の回転が速い岡田なのでコメントに少々、注釈がいるけれど、要するにこういうことだ。
<1>無死の走者を生かすために犠打はやはり有効
<2>西勇輝が進塁打を打てればよかったがさすがにそこまでは求められない
<3>不振が続いているとはいえ、近本光司は得点圏打率が高い。1回に安打も出て、気持ちも楽になっているだろうから、あそこは最初から近本勝負だった-
こんな感じだろうか。結果的に近本で大きな5点目をゲット。その後に中野拓夢、ノイジーもつながってこの回、一気に3点を取れたのは予想以上だった…ということだ。そう考えればやはり木浪への犠打指令は大きかったのである。
「出されたサインをしっかりとやるだけです」。きょう15日に29歳の誕生日を迎えるその木浪は額に汗を浮かべながら話した。これが今季9個目の犠打。自身20年にマークした「8」を抜いて自己最多となった。
岡田政権になって遊撃手に起用。開幕は小幡竜平だったが“正遊撃手争い”と言うほどの様子でもなく、まずレギュラーと言っていい状況だ。この試合、8点目の適時打を放つなどバットでも貢献している。
この回はなんだか懐かしい「キナチカ・コンビ」でオリックスを追い込んだとも言える。もちろん岡田阪神にとっても、自らの形に持ち込んだ意味のある勝利だろう。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




