正直な感想を言えば、これでも勝てるのか、という感じだ。1回こそ先制できたものの2、3回の満塁の好機で得点できないなど拙攻の連続。ようやく8回に代打・糸原健斗の決勝打が出たのである。
面白いな、と思ったのは指揮官・岡田彰布の勝利インタビューでアナウンサーが「勢い」という言葉を使った場面だ。ここで岡田はこんな話をした。
「勢い言うて、勢いがあれば序盤に5、6点入ってるかも分からんし…」。テレビカメラの前ということもあって、そんな表現に止めていたが記者だけなら怒ったかもしれない。岡田は「勢い」という表現が好きではないからだ。以前も書いたが「勢いだけで勝てるとかそんなもんちゃうで」と言うことが多い。
背景にあるのは観察眼と分析力、そこに決断を含めた野球勘が重要という考えだろう。65歳、成功も失敗も多くの経験がある岡田にはそれがある。もちろん、常に成功するわけではないが、すべてのことに裏付けを持とうとしているのだ。
虎番記者の記事で読んでもらいたいけれど、この日にしてもブルペンの順番である。8回に2番手・島本浩也が走者を出して2死二塁になると岡留英貴、及川雅貴と経験の浅い順番で起用。そこは「四球覚悟で」送り出したという。
さらに決勝打の場面、8回1死一塁で代打に出た糸原はベンチのサインをうかがっていたというが「バントなら糸原は出さへん。糸原は打つ人。ゲッツーでも9回、近本(光司)からやし」。明快な起用法が結果につながった。
「勢い」では勝てない。そこには裏付け、作戦がないと戦いにはならないということだ。そんな岡田でも「流れ」という言葉は使う。さきほどの8回、ブルペン陣起用の場面。最終的に2死満塁の危機だったが馬場皐輔がサンタナを中飛、それも近本の好捕で終えたところだ。
「流れがよかったから(打球が)正面に行くんや」。岡田はそう言った。科学的にそんなことがあるのかどうかは分からないが、そこが野球である。流れは存在するとしか思えないし、実際にそれで「正面をつく」こともある。8連勝の阪神は間違いなく「流れ」に乗っているのだ。
これで長期ロード10試合を終え、9勝1敗となった。実に勝率9割。油断はできないけれど本当にこれはいよいよ…という感覚だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




