おそろしい阪神の流れである。「普通にやるだけ。別に。ゲーム前から勝ちにいってないし」。延長12回、サヨナラ勝利した指揮官・岡田彰布は勝利監督インタビューで苦笑しながらそう漏らした。
デーゲームで広島、DeNAが敗戦。できれば下にいるチームが勝って、ナイターの阪神に少しでも圧力をかけたいところだが。まるで反対なのだ。もちろんライバルが昼間に勝っても、現状、プレッシャーはかからないところまで阪神は来ている。長期ロード9勝1敗がこれで10勝1敗に。驚異的な連勝はさらに続くことになった。
さすがに試合後はバテた様子の岡田だったが「流れのよさ」は感じているようだ。虎番キャップたちの囲み取材で、こんな不思議なことを言った。「木浪のゲッツーが大きかったな。あれが大きかったよ」-。どこまで本気かどうか。そこは謎だが、はっきりとそう語ったのである。
「木浪(聖也)のゲッツー」とは坂本誠志郎の犠打野選で同点に追いつき、なお1死一、二塁の勝ち越し機を迎えた6回のことだ。しかし併殺でチェンジとなり、7回表は6回から投げていた桐敷拓馬が2イニング目の投球となった。
「あそこで(桐敷に)回ってたら代打で投手、もう1人、いかなあかん」。岡田はそう言った。勝ち越し機で投手に回れば代打を出すのは当然だ。もちろん、そこで勝ち越せれば勝ちパターンに入っていく。しかし凡退に終われば、同点のまま3番手以降の投手を出さなければならない。
桐敷は現状、いわゆる“ロングマン”を務めている。先発投手が早い回に降板した後、2回あるいは3回を投げさせ、試合をつくっていく役割だ。それが1イニングで交代してしまえばうしろにしわ寄せがいく。
だから桐敷に2イニングを投げさせるため、結果的に木浪のゲッツーがよかったと、言ったのである。野球の常識的には歓迎できないはずの併殺を「よかった」と喜んだ指揮官。もちろん勝ったからこそではあるけれど、湧き起こる現象すべてをプラスに感じているようだ。元来「マイナス思考」の岡田ではあるにもかかわらず、だ。
これは、もう、完全に「アレ」への流れが阪神に来ている。もちろん、その瞬間まで油断は禁物だけど、本当にそうとしか言いようがない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




