日本一を決めた5日深夜、テレビ画面に映し出されるビール掛けを見ながら、京セラドーム大阪で原稿を書いていた。ふと思ったのはこういうことだ。

「大の大人が大人数で日曜の深夜にビールかけて大騒ぎって。まあ普通ちゃうなあ」-。プロ野球というかスポーツの世界だからこそ、あり得る光景だろう。他でやったらひんしゅくを買うのは間違いない。だからこそ楽しいんやな、と感慨にふけったのである。

この日、指揮官・岡田彰布はさっぱりとしたジャケットに身を包み、オーナー報告に臨んだ。次々に浴びせられる質問にも、大仕事をやり遂げた表情でご機嫌だった。そこで、あることに気づく。

「せきをしていないなあ」ということだ。シーズン中、ずっと気にしていたのは岡田がせき込むことだ。囲み取材中、せきが続いて、しゃべれなくなる光景も。大丈夫かな、と心配になったときもあったのだ。

岡田は秋季キャンプで若手を鍛える考えを示した。その中で言ったのは「やっぱり体の強さがないと1軍に上がってももたない」ということだ。技術はもちろん重要だが、それを出し続けるには体力、スタミナがあってこそ。よく分かる話である。

阪神、他球団に限らず、発熱、体調不良が出た今季だった。だが65歳の岡田は1試合も欠場していないし「しんどいわ」と言いながら、そうでもない様子だった。唯一、せきだけが気になったがこの日はそれもなかったのである。

知り合いの医師に聞けばストレスからせき込むことはよくあるという。当たり前だが知らないうちに重圧はかかっていたのだろう。それが晴れた今、せきは出なかったのかもしれない。

「風邪もひいてないよ。発熱なんかないわ。なんでかて、おまえ、節制してるからよ。どっかの新聞記者みたいに夜中の3、4時まで飲んでないよ」

岡田らしく、そう笑わせたが、実際、早めに就寝していたようだし、酒量も落としていたと聞く。まずは体力、健康があってこそ、というスポーツ選手、あるいは社会人の基本を見たような気もする。

今月25日には66歳になる岡田。日本一を達成したことで、来季は年下の監督が率いる全チームから追われる立場になった。球団初の連覇へ夢は広がるが、まずは少し休養してほしいと思うのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

今季全日程を終え、オーナー報告で阪神電鉄本社を訪れた阪神岡田監督(撮影・上山淳一)
今季全日程を終え、オーナー報告で阪神電鉄本社を訪れた阪神岡田監督(撮影・上山淳一)
23年11月5日、祝勝会で大山(左)と佐藤輝(右)にビールをかけられる阪神岡田監督(撮影・上山淳一)
23年11月5日、祝勝会で大山(左)と佐藤輝(右)にビールをかけられる阪神岡田監督(撮影・上山淳一)
オリックス対阪神 38年ぶりの日本一を達成し、ナインに胴上げされる阪神岡田監督(2023年11月5日撮影)
オリックス対阪神 38年ぶりの日本一を達成し、ナインに胴上げされる阪神岡田監督(2023年11月5日撮影)