「聞いてやるなよ…」。やるせない気分になったのは試合後の通路だった。左翼への飛球を落とすミスをした立石正広に多くの虎番記者が近寄り、話を聞こうとする。そのすぐ後ろを歩いていた中野拓夢がボソッとこうつぶやいたのだ。

気持ちは分かる。何と言ってもルーキー。しかも外野は本職ではない。ミスを責められても…という後輩思いの心から出た中野の言葉だと思う。それでもこちらはそれが重要な仕事だし、読者、ファンから要求されている部分ではある。

記者も喜び勇んで聞いているワケでは、当然、ない。もっと言えばプロ選手なら失敗をキッチリ話すことで成長していく部分もあるのではないか。中野も仮に自身のミスについてなら、そうは言わなかったはず。過去の名選手たちもこの道を通ってきたのだ。厳しい世界である。

「この時期に試合に出ているということは結果を求められる立場。新人だろうが外国人だろうが関係なくね。責任感を持ってやっていくしかない。コーチも含めて」。外野守備走塁チーフコーチ・筒井壮はシビアにそう振り返った。

だがハッキリ言わせてもらって敗因は立石のミスだけではないと思う。守備では熊谷敬宥も1つ悪送球があり、それが失点に結びついた。もちろん、それだけでもない。最大の要因は苦手の栗林良吏を攻略できなかったことだろう。

思い出すのは前監督・岡田彰布(オーナー付顧問)が言っていたことだ。「戦犯をつくったらあかんよ」というもの。ミスがあっても、それをカバーできればいいのだし、負けたときは投打ともが力を出せなかったということだろう。

あえて言えば敗戦の全責任は監督にあるのだ。栗林は試合前まで右打者との成績が2割4分3厘、左のそれは1割7分4厘と右腕ながら左に強かった。阪神では立石、熊谷が対栗林の対戦成績がよかったのだ。それもあっての起用と見るが、それで結果が出なかったのは使った方に責任があると言うしかない。

反省は反省として、ここまで来れば、もう、目の前のゲームを必死で戦うしかないのである。2位巨人とのゲーム差はなくなった。20日からは前回の対戦で今季ワースト7連敗のキッカケとなったDeNA2連戦だ。相手のモチベーションは高い。悲願のリーグ連覇へ向け、阪神、ここは正念場である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 4回表広島無死、立石正広は中村奨成の飛球を落球しエラーを記録(撮影・加藤哉)
阪神対広島 4回表広島無死、立石正広は中村奨成の飛球を落球しエラーを記録(撮影・加藤哉)