今夏、南北海道大会準優勝の札幌日大は、2投手による完封リレーで稚内大谷に6-0で快勝した。背番号1の福内将人投手(2年)が6回2安打無失点とエースの誇りを取り戻す投球で道大会初登板の1年生左腕、石井蒼大投手につなぎ、秋は優勝した01年以来、15年ぶりの決勝進出を決めた。決勝は、今日8日に行われる。

 札幌日大の福内は、秋晴れの空を見上げ、祈った。マウンドに立つ時、必ず行うルーティンだ。「空にいる父が助けてくれるから」。5日の準々決勝、滝川西戦では、完投も見え始めた5点リードの8回に3ランを含む連打を浴びて1点差に迫られ、途中降板。「悪い記憶は良いイメージに上書きして試合に臨んだ」。背番号1のプライドを、準決勝のマウンドにぶつけた。

 身長182センチの本格派右腕だが、公式戦で完投はない。「夏はこの子で行ける」と森本卓朗監督(35)が期待したほどの素材だが、準優勝した今夏の南北海道大会はベンチ入り出来ず。春先に足首を故障し、戦列復帰に約2カ月を要した。同監督は「丁寧で、本来はもっと迫力のある投手」。故障の影響で体のバランスを崩し、球威、制球力ともに、まだ万全とは言えないが、強打の稚内大谷打線を相手に6回を2安打0封。「質には自信がある」という直球に加え、この日はスライダーを多投し、三塁を踏ませなかった。

 小5の冬、試合の応援に来てくれていた父久さんが、その帰りに急死した。もともと、心臓が弱かった。父が母尚美さん(51)へ送った「今日は、いいピッチングだったよ」という最後のメールを印刷し、今大会からベンチに持ち込んでいる。「父とは野球の強い高校へ行くんだと話していた。ここまで来たら負けられない。支えてくれたすべての人のために、甲子園を狙いたい」。チームにとっては優勝した01年以来の決勝舞台。歓喜の声を、天国へ届けてみせる。【中島宙恵】