札幌地区で札幌琴似工が22安打14点の猛攻で石狩南を下し、3年連続初戦突破した。相手投手が横手投げに交代した9回に一挙10安打10点と畳みかけ試合を決めた。前回南大会に出場した13年に作製した下手投げ打撃マシンを改良して対策してきた。相手先発投手が上手投げという想定外のスタートも、先発投手には待ち戦術で球数を投げさせ、横手投げ投手に交代した直後に畳みかける「2段ギア打線」で勝ちきった。

 打球が面白いように飛んだ。札幌琴似工は4-0の9回、石狩南が先発松田から横手投げ川口に交代すると、先頭の杉田涼司遊撃手が中前打で出塁。3番佐藤駿太左翼手の中越え三塁打であっさり1点。4番遠藤豪一塁手(いずれも3年)の左犠飛で、この回2点目を挙げると、2死から四球を挟み6連打で計10点をたたき出した。

 読み違えても焦らなかった。15日の抽選後、石狩南の先発を横手投げの川口と想定。手製の打撃マシンで打ち込んできた。この日の相手先発は上手投げの松田で「代えさせるように低めの変化球は手を出さずに球数を稼ぐことを徹底した」と遠藤。8回まで地道に4点を稼ぎ“その時”に備え、大勝を呼び込んだ。

 不遇だった遺産が日の目を見た。冨田望監督(35)は「いやあ、ここまで打つとは」と驚いた。初戦突破をもたらしたマシンは13年南大会初戦用だった。函館大柏稜の下手投げエース対策として機械科教諭が改造。高さ30センチに設定した究極マシンは、シュート回転で落ちる球筋を再現できず、5安打無得点に封じられていた。

 今回のマシンは「川口仕様」にこだわった。高さ約90センチに変更。球種は110キロの直球と95キロのカーブを投げ分けた。さらに監督の指示も細かかった。「右打者は変化球が曲がる前に打ちにいく」と遠藤。左の3番佐藤駿は「逆らわず三遊間に打ち返す」と説明。独特の角度からくる球も苦にせず、佐藤駿3打点、遠藤2打点と量産した。

 次は昨秋の初戦で敗れた札幌第一と対戦する。「自分たちの野球をやって公立の意地を見せたい」と遠藤。工業高校独自のテクノロジーを駆使し、センバツ出場の難敵にリベンジする。【永野高輔】