宮城では東北のエース左腕葛岡仁(2年)がおとこ気の完封で、連覇を狙うチームを8強一番乗りに導いた。東北生活文化大高戦に今夏初先発。7回の打席で軸足の左足甲に死球を受けながら続投した。9回無死一塁から降雨による2時間4分の中断にも動じず、6番植木利久内野手(3年)の本塁打による1点を守り切った。

 少し足を引きずるそぶりを見せても、葛岡は奮い立った。無死一塁から再開した9回。アイシングを施した軸足の左足にはテーピングもしていた。「夏の大会は0点に抑えるのが目標」。一打出れば同点の2死三塁となったが、最後はスライダーで空振り三振に切って取った。被安打5、四球は1つも出さなかった。我妻敏監督(35)が手放しで喜んだ。「今日は葛岡に尽きる。ゼロに抑えて、無四球ですから」。

 7回の打席で左足甲に死球を受けた。治療のためベンチに下がり、臨時代走が出た。だがすぐに8回以降の続投を志願した。リードはわずか1点。我妻監督も「やっぱりエースなので」と、すべてを託した。8回も2死二塁と得点圏に走者を背負った。ここでも打者のバットは空を切った。東北のエースは、要所で三振を取れる強みがある。

 6月の仙台育英との東北大会準決勝。2点リードを守れずに、9回裏に逆転サヨナラ3点本塁打を浴びた。終盤を耐え抜くタフさが、連覇への大きなテーマになった。東北大会後の20試合近い練習試合の登板は「ほぼ終盤だけ」と葛岡は言う。我妻監督は「ランナーを出しても粘れるようになった」と明かす。まさにこの日の8、9回が成長の証し。2時間4分の降雨中断中は「あまりピンチとは考えていなかった」と、心の強さも兼ね備えていた。

 優勝候補がわずか1点差と苦しんだ。それでも葛岡は胸を張る。「完封は一番の理想ですから。自分の中でも次につながる」。今夏は初戦の2回戦で救援し、初先発は死球、降雨中断をおとこ気で乗り越えた。昨夏はベンチ入りできなかった甲子園。「エースとしてマウンドに立ちたい」。8強入りで、夢にまた1歩近づいた。【久野朗】