日大山形が山形中央を16-3と圧倒し、4年ぶり17度目の夏甲子園出場を決めた。大会5試合すべて2桁安打の猛攻で、決勝では22安打を浴びせた。4番舟生(ふにゅう)大地捕手(3年)が、8回に公式戦初で高校通算25本目となる満塁弾をたたきこむなど4安打6打点。今春から主将に就任し、嫌われ役に徹してまでチームをまとめてきた努力が、ついに実った。

 フルスイングで聖地行きを手中にした。12-3の8回無死満塁。舟生が3球目の甘く入った真ん中直球をかち上げると、打球は右中間スタンドに突き刺さった。もう大丈夫。リードを13点差に広げると、背番号2は時間をかけてゆっくりとダイヤモンドを1周した。

 「かみしめたかった。気持ちよかった。仲間がつないでくれたから打てた」

 主将に就任してからの約5カ月の記憶が、走馬灯のように脳裏を駆け巡った。アップでは声が出ず、まとまりを欠いたチームに限界を感じた荒木準也監督(45)から、3月に主将就任を告げられた。副主将から昇格した舟生は「最初は何をやっていいか分からなかった」と当時を振り返りつつ「1人1人が強い気持ちを持つ、負けないチームになった」と胸を張った。

 嫌われ役に徹した。練習中にエラーをして笑う者や、カバリングに入らない者には厳しく叱った。初戦敗退に終わった春の東北大会後には、体を張って球を止められなかった主砲の3番斎藤史弥内野手(2年)には雷を落として球際の強さを説くことで、今夏の爆発を引き出していた。舟生は「言わないで後悔するぐらいなら、言った方がいい」と信念を曲げなかった。

 そんな主将の後ろ姿を見て燃えない理由がなかった。前主将の鈴木琉生外野手(3年)は3安打4打点と気を吐いた。「荒木監督からはチームのことより、自分の打撃に集中してくれと言われた。舟生と監督には感謝してます」。この日5安打2打点の後藤裕弥外野手(3年)も「舟生になってまとまった。チームのために言っていたのは分かっていた。舟生を嫌うやつは誰もいない」と擁護した。

 適材適所に人材を配置して、チームを躍動させた荒木監督は「やってきたことが正しいってことを証明してくれた」と胸をなでおろした。前回出場時の13年は県勢初の夏4強。舟生は「ベスト4を超えていけるように」と日本一も視野に入れる。結束力が増した日大山形の夏本番は、これから始まる。【高橋洋平】

 ◆舟生大地(ふにゅう・だいち)1999年(平11)5月3日、山形・真室川町生まれ。真室川小3年で野球を始め、小6で楽天ジュニアに選出。真室川中を経て、日大山形では1年春からベンチ入り。181センチ、84キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄、姉2人、祖父母。10歳上の兄源太さんも日大山形OBで06年夏全国8強時の正中堅手。