大阪桐蔭(北大阪)4年ぶりの夏4強は、根尾のバットから始まった。

 2回表1死。140キロ、真ん中高めの直球を捉えた打球は左中間スタンドに消えた。高校通算29本目、今大会2本目の本塁打は先制ソロ。満席の甲子園が沸き返った。投げては試合を作った。先発で最速148キロをマークし、5回を4安打6奪三振の2失点。1点リードでエース柿木にバトンを託した。

 2回の1発は、大阪桐蔭の夏の甲子園通算45号だった。「塁に出ることだけ考えていたから『入ったらいいな』とは思ったけど…。風に乗ってくれました」と淡々と振り返る。学校の数字上、PL学園の本数に並んだことを知ると「世代が違うし、かなり前の話ですし…。でも、素晴らしい。PLさんの記録は遠くにあるもんだと思っていましたからね」と、どこか人ごと。「じゃあ藤原は46ですね。僕が打った後、あいつは固め打ちというか、めちゃくちゃ打つんですよ。狙ってくる。(藤原の)2発目は特にすごかった。センターオーバーかなと思ったのに」。自分のことより、この日2発を放った盟友の爆発がうれしそうだ。

 根尾は今、春夏連覇しか興味がない。「浦和学院さんは間違いなく手ごわかった。強い相手に勝った方が弱い相手より、勢いがつきます」。あと2勝。歓喜のゴールは完全に射程圏内に入ってきた。自然と高まるワクワク感。「早く試合がしたいですね」。もっと打ちたい、投げたい。野球の申し子のモチベーションは、最高潮だ。【加藤裕一】