プロ野球ドラフト会議で、最速150キロ右腕で高校通算30本塁打の東海大札幌・小林珠維投手(3年)が、内野手としてソフトバンク4位指名された。183センチ、86キロの恵まれた体格を生かした長打力に加え、遠投120メートル、背筋力210キロ、50メートル走5秒9という高い身体能力を武器に、野手として開花を目指す。

   ◇   ◇   ◇

驚きすぎて、笑顔が出なかった。東海大札幌高の食堂にセッティングされた会見場。ドラフト会議開始から約1時間半が経過した午後6時35分、ついに名前が呼ばれた。「ソフトバンク 小林珠維」。ともに戦ってきた3年生部員が「うおー!」と雄たけびを挙げる中、小林だけは緊張した表情で「本当に呼ばれたのか、信じられない」と、画面に映された名前を、じっとながめていた。

高校では主に投手兼外野手でプレー。公式戦での内野での出場は一塁手だけだったが、指名は内野手。夏の敗退後、大脇英徳監督(44)から「いろんな可能性があるように」と、三塁の守備練習も続けていた。小林は「投手から内野手になった今宮選手みたいに、たくさん練習して1日でも早く1軍で活躍できるように」と意気込んだ。

丈夫な体を授けてくれた両親に恩返しを果たす。浦河堺町小1年で野球を始めると同時に、冬場は父康秀さん(44)と兄由来さん(北海学園大3年)と3人で週3日、約2~3時間スピードスケートの練習で足腰を鍛えてきた。小学校卒業までの日課で「父と兄を必死で追いかけていた。あの経験が丈夫な下半身につながった」と振り返った。

プロ入りへの後押しをしてくれたのは母江理子さん(43)だった。今春、大脇監督と3人での進路面談。小林は4月の高校日本代表合宿で大船渡の佐々木らレベルが高い選手を目の当たりにし、迷いが生じていた。すると母が「自分だけが劣っていると思わないで、やれるだけやってみな」とカツ。プロ志望が正式に決まった。この日、会見場に同席した両親の前で夢の扉をこじ開け「ここまで育ててくれてありがとう」と号泣した。

初めて北海道を離れるが「将来、北海道に帰ってきて日本ハムを倒したい」。屈強な肉体をさらに磨き上げ、故郷への凱旋(がいせん)を目指す。【永野高輔】

○…東海大札幌の恩師、大脇監督は小林の名前が呼ばれると、思わず目を潤ませた。教え子の指名は東海大を経て12年オリックス3位指名を受けた伏見寅威以来7年ぶりだが、高校から直接の指名は今回が初めて。内野手での指名に「150キロを投げられるという身体能力を、野手として評価していただいた。先輩にかわいがられる選手になってほしい」と期待した。

○…小林の父康秀さん、母江理子さんが会見場に同席し、歓喜の瞬間に立ち会った。公務員の康秀さんは、4年前から網走市に単身赴任中だが、息子の晴れ舞台に休暇を取って出席した。「名前が呼ばれたときは頭が真っ白になりました」。江理子さんは「家族の悲願だった。本当にうれしいです」と涙をぬぐった。