プロから注目される福岡大大濠の山城航太郎内野手(3年)が、夏の大会中止の悔しさをバネにさらなる飛躍を目指す。

2年冬から投手も兼務し、最速145キロ右腕としても成長を遂げた。コロナ禍で福岡県独自の代替大会開催もなくなったが、将来のプロ入りを目標に掲げる。同校は6月1日に約2カ月ぶりの練習再開する予定。八木啓伸監督(42)が近況を語った。

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プロ複数球団が注目する山城主将が、八木監督から受けた「諦めたら終わり」の教えを胸に、コロナ禍で鍛錬を重ねている。

夏の甲子園やそれにつながる地方大会が中止。さらに5月25日の野球部ミーティングで、指揮官から福岡県独自の代替大会開催断念が知らされた。その中で、八木監督は「中止になったけど、やってきたことはなくなったわけじゃない。これから将来の夢に向かって日々積み重ねよう」と伝えた。涙が止まらなかった山城だったが、「後輩に自分たちの分まで託すという話をしていた」という。悲しみの中、主将らしく現実と向き合った。

活動休止中も気丈だった。八木監督と小まめに連絡を取り、約60人の部員を束ね、「LINEでみんなに目的を失わずに頑張ろうと声かけしていた」という。常に気を配り、チームを支えてきた。

練習は、自宅で体幹を鍛えるほか、近所を走ったりキャッチボールを行う程度だった。合間に読書や勉強を行うなど、県内屈指の進学校らしいメリハリで工夫を凝らした。

山城は、軟式のU15日本代表としてアジア選手権で三塁手と投手で出場している。昨秋まで野手中心だったが、強肩を生かし冬から本格的に投手練習を始めた。最速は145キロを計測。「二刀流」で夏の秘密兵器になるはずだった。

だが4月1日から部活動が休止になった。6月1日から約2カ月ぶりに練習再開するが、すでにすべての公式戦が消滅。プロへのアピールの場は失われた形だ。八木監督は今後について「最後は練習試合なりの節目をつくってあげたい」と話す。開催時期は未定ながら、集大成の場で、ひと花咲かせる。【菊川光一】

○…ドラフト候補の189センチ右腕、山下舜平大投手と投手も兼ねる深浦幹也外野手(ともに3年)も高校生活で得た財産を次の舞台に生かす。八木監督によると、山下は「この夏、結果を残したかったが、野球はこれからも続けるので頑張ります」と、25日のミーティングで誓ったという。投手兼務の山城主将を加えた“3枚看板”での夏挑戦は夢に終わったが、力強く歩みを続ける。

◆山城航太郎(やましろ・こうたろう) 2002年(平14)9月3日生まれ、福岡市出身。小1から軟式の西高宮リトルメッツで野球を始める。高宮中野球部から福岡大大濠に進み、1年春の福岡地区大会で左翼手として公式戦デビュー。目標はソフトバンクの千賀と柳田。右投げ右打ち。180センチ、80キロ。