<全国高校野球選手権:鶴岡東2-1聖光学院>◇11日◇1回戦
青柳は最後の打者になった。頭から滑り込み、動けない。1点を追う9回1死一、二塁。4球粘ったものの併殺打。5秒間、静かに頭を抱える。「みんながつないでくれたのに」。
静寂と恐怖の夜が、土壇場に立ち向かう勇気をくれた。5月下旬、福島・吾妻山の頂上近く。曇り空で星も見えず、不安は募る。長く続く野球部の伝統行事「山下り」。24キロの山道を1分置きに1人ずつ下る。深夜2時、青柳は迷わず先陣を切った。「当時は自分、キャプテンだったので。誰よりも先頭にと」。
360度の暗闇。蛇行する道には側溝も多い。「誰も助けてくれないし、どんなに怖くても逃げ出せない。試合と同じだな、って思って歩きました」。指導者からは「感性がない代」と言われてきた。1人1人が生存本能をとぎすませ、ヒトとして強くなった。
最後のチャンスで叫びが聞こえた。「1つ前の(佐藤)羅天がヒットでつないでくれて、一塁から『頑張れ!! つなげ!!』と言ってくれたので、それはすごく覚えています」。仲間の声、アルプスの大声援に包まれてのひと振り。自分のおえつが耳を支配して、夏が終わった。【金子真仁】

