完封勝利目前、守備の乱れが出たカープが悪夢の7連敗だ。9回先頭亀井の当たりを、途中出場の左翼天谷が抑えられず二塁打として、1点差を追いつかれた。延長11回には遊撃田中が痛恨の悪送球で勝ち越し点を与えた。この日は両軍OBで、37歳の若さで急逝した故木村拓也さんの命日。連敗を脱出する勝利を捧げることはできなかった。
遊撃田中は顔をしかめて、送球の行方をみつめた。白球が三塁側ベンチ前まで転がる間に、二塁走者寺内が勝ち越しのホームを踏んでしまった。延長11回。1死二塁から鈴木の三遊間へのゴロを止めたまではよかったが、最悪の悪送球となってしまった。
マツダスタジアム1階の球団事務所。入り口のドアを開けてすぐ正面の柱に、37歳で急逝した故木村拓也さんをしのぶプレートが埋められている。事務所の奥はロッカールームへと続く。緒方監督をはじめとしたナインは毎日、刻まれた笑顔を見て球場入りする。
「最後まで闘う勇気と闘志。あなたの笑顔を 私たちは忘れない。」
木村拓也さんがマツダスタジアムで倒れてから丸5年がたった。2010年(平22)4月7日。あれから5度目の命日で、初めての巨人戦。両チームにとって負けられない戦いだった。広島は6連敗中。投手以外はすべてをこなし、いつも笑顔を絶やさなかった木村拓也さんのような強さが、今こそ必要とされている。
それぞれの思い出がある。緒方監督は試合前に口を開いた。忘れられないのが自身の引退試合だ。センターを守っていた監督のもとに、フライを打ち上げてくれた。「わざとというかね、花を添えてくれた。拓也のプレートもある。忘れるわけないよ」。8年ぶりに復帰した黒田は5年前を思い出す。「アメリカで衝撃を受けた。ショックは大きかった。3つ上で親しくしてもらっていた」。バッテリーを組んだのも黒田だった。アテネ五輪代表にも広島から2人で行った。
木村拓也さんを知っている選手は少なくなった。だがプレートとともに、生き続ける。今季初スタメンの新井は言った。「こういう状況だしなんとか自分のバットでね。それも(木村さんへの思いも)もちろん含めてね」。
明けない夜はない。不屈の魂を宿し、今日も戦うしかない。



