キャプテン鳥谷の猛打賞が、選手会長上本の好打が、先発岩田の粘りが、1発で吹き飛んでしまった。阪神は7回は1番鳥谷敬内野手(33)、2番上本博紀内野手(28)のコンビで、チャンス拡大から勝ち越しを決めたのに~。この悔しさ、今日3日に晴らすしかない。
左打席の鳥谷はどっしりとしていた。同点の7回1死一塁。衰え知らずのロッテ涌井に145キロ、148キロでいきなり追い込まれた。6回まで毎回走者を出すも2得点だけだった。暗い空気が漂い始めても、鳥谷は懸命に粘った。7球目が外れ、フルカウント。反撃の準備がこれで整った。
鳥谷のミート力を信じ、一塁走者坂はスタートを切った。ショート鈴木が二塁ベースに寄り、三遊間が空く。鳥谷は146キロの外角直球を生み出したスペースへと転がした。サラリと出来上がった一、三塁。打撃の状態について「まあまあです」と多くを語らないが、8球の過程で復調具合は明らかだ。
今季3度目、2試合連続の猛打賞で甲子園のボルテージは上がった。これで通算安打数は1668。先月26日には球団6位だった掛布(現阪神DC)の1656安打を抜き、新しい境地へと入った。
抜かれた掛布DCは言う。「トリは僕と同じで数字への興味より、チームのことを思っているんじゃないかな。でも生え抜きとしてはやっぱり、藤田平さんの記録(球団1位の2064安打)を抜いてもらいたいよね」。常に手を抜かない姿勢は周囲の心をつかみ、応援を呼ぶ。苦労して刻んだ1本に続いたのは、早大の後輩上本だ。
三塁に激走の坂、一塁に執念を見せた鳥谷。そうして出来たチャンスで、上本は内角勝負に立ち向かった。涌井の140球目。体をくるりと回転させると、左前に打球が弾んだ。誰もが待っていた勝ち越し適時打。待望の1点に和田監督も「岩田がなんとか粘り強く投げていた。野手も岩田に勝ちをつけるように、1点を取る気持ちが出来ていた」と執念を感じ取った。
決勝打になるはずだったが、最後に悪夢の逆転で吹き飛んだ。暗いベンチ裏の通路。2人も他の選手同様、多くの言葉を発することはなかった。上本がしぼり出したのは「また明日頑張ります」。そう、敗戦の中にも収穫は確かにあった。開幕で組み、1度は“解散”した1、2番コンビ。2人の息がそろいだした。【松本航】



