4日に死去した星野仙一氏は2013年にプロ野球楽天を初のリーグ優勝と日本一に導き、東日本大震災の被災地となった東北に歓喜をもたらした。昨年11月28日に行われた野球殿堂入りを祝う会で「ずっと野球と恋愛してきて良かった。もっともっと野球に恋をしたい」とあいさつした。野球を通じて夢を与え続けた70年の人生だった。

 楽天の監督就任1年目に震災が起き、日常の景色が一変する中、全力を尽くした。レギュラーシーズンで24勝0敗の田中将大投手(現ヤンキース)を擁して日本シリーズで宿敵の巨人を倒した。

 3勝3敗で迎えた第7戦、3-0とリードして九回を迎えると、ちゅうちょすることなく前日160球を投げて完投負けした田中投手の名前を球審に告げる。「(第6戦が)情けない投球だったので、出番がもらえるならいつでもいく」と救援の機会を待っていたエースの心意気をくみ「最後はあいつがふさわしい」と送り出した。

 本拠地仙台のファンは主役の登場を総立ちで迎え、大歓声を受けた田中投手は無失点で日本一をつかみとった。05年の球団創設当初から低迷が続いた楽天の初の栄冠は、星野監督自身にとっても、現役時代からの宿敵巨人を倒して手にした初の日本一だった。

 場内インタビューでは「大震災でご苦労なさっているみなさんを見ると、日本一になって癒やしてあげたい、それしかないと信じてこの3年間戦ってきました。ほんの少しでも、すずめの涙でも癒やしてあげられたらといつも考えていました」と話した。

 副会長を務めていた楽天球団によると、息を引き取る直前まで「コーチ会議に出られるかな」と話していたという。最後まで野球への情熱は薄れることはなかった。