星野さん、見てくれましたか! 楽天が延長12回2死走者なしからのしぶとい攻撃でロッテに競り勝ち、開幕戦を飾った。ウィーラー、銀次が粘って四球を選び、途中出場の藤田一也内野手(35)が右前に決勝適時打を落とした。膵臓(すいぞう)がんのため1月4日に70歳で死去した元監督の星野仙一氏のために、何としても優勝を狙うシーズン。授けてもらった勝利への執念を示した。

 時刻は午後11時25分になろうとしていた。楽天ベンチは、誰1人諦めていなかった。2-2の延長12回2死走者なしからウィーラー、銀次が四球を選び一、二塁。藤田は内角のカットボールを右前へしぶとく落とし、決勝の適時打とした。延長11回先頭で迎えた第1打席は、逆えび反りのごとく頭から突っ込んだ。一、二塁間への微妙な当たりを執念のヘッドスライディングで内野安打とし、梨田監督を「あれが勝利を呼び込んだ」と言わしめた。藤田は「最後出るっていうのがね」と、しみじみ。ヒーローインタビューでも「星野さんが亡くなってみんな悔しい気持ちでキャンプから入った」と、一戦にかける思いを口にした。

 銀次も一緒だった。オープン戦の打率は規定打席を達成した中で最下位の1割1分8厘だった。1点を追う8回2死一、二塁。カウント1-1からの3球目、高め143キロシュートを右中間へ飛ばし、一時逆転の2点適時三塁打とした。三塁上で清水コーチから「星野さんが打たせてくれた」と言われた。銀次も「星野さんのおかげで打てたと思います」と言葉をかみしめた。

 銀次の脳裏によみがえる。日本一を成し遂げた13年。打席で結果を出せず、表情に出すことが度々あった。そんな時に「お前は、何様や」と星野さんから呼び出された。「打てないからって何でそんな暗い顔をしているんだ。一流の選手は、打てなくても明るくしていた。王さん、長嶋さんは暗くなかったぞ」と続けた。何度怒られたか、分からない。胸ぐらをつかまれかけたこともあった。どんな厳しい仕打ちでも「あの人は、自分のおやじみたいな人」だった。

 そんな大切な人が1月に亡くなった。自然と涙がこぼれた。藤田にとっても恩人の1人だった。「楽天で野球の厳しさ、楽しさを伝えてくれた方。やっぱり見ててくれるような気がする。今日だけでなく、最後にいい報告が出来るようにしたいですね」。星野チルドレンが、5時間にわたる死闘を執念で飾った。【栗田尚樹】