記念の1本を献上した後、貫禄を示した。楽天先発の岸孝之投手(33)が今季初完封で2勝目を挙げた。日本ハム清宮との初対戦で直球を二塁打されると、チェンジアップを解禁。続く2打席は代名詞の沈むボールで空振り三振に仕留めた。しびれる「1-0シャットアウト」を決め、チームの連敗を7で止めた。

 譲れない局面がきた。1点リードの7回2死二塁。岸が、打席に清宮を迎えた。カウント2-2からの5球目。カーブがワンバウンドし、2死三塁としたが「自分の投球をするだけ」と冷静だった。続く6球目、宝刀のチェンジアップを低めに沈めた。バットが空を切るルーキーとは目も合わせず、クールに一塁側ベンチへと退いた。前の打席でも同じチェンジアップ。2打席連続の空振り三振に片付け、格の違いを見せつけた。

 清宮について問われた岸は「特に何も」とだけ言った。ただ、第1打席で高め直球を中堅フェンス直撃の二塁打にされたことだけは「ものすごい打球だった」と言った。バッテリーを組んだ嶋も「(清宮は)懐が広いというか、雰囲気があった。なめてかかったら、いかれると思って大事に勝負した」と第2打席以降は慎重に料理した。

 7連敗で迎えた一戦。1点のリードを守りきり、2年ぶりの完封でチームの勝利に結びつけた。西武から楽天にFA移籍後、新天地では初の完封だったが「どうでもいい」と興味がなかった。日本ハムの黄金ルーキーについても「特に」だけ。月が替わり、チームの連敗が止まった事実だけに「本当に大きかった。1-0で勝てたこと、それも良かったし。意味のある1勝」とかみしめた。梨田監督も「試合前に清宮君が打って、チームが勝てばいいと話していたけど、そうなって良かった。本当に大事な1勝」と久しぶりの笑顔を見せ、ホッと息をついた。【栗田尚樹】