新コイキラーだ。阪神才木浩人投手(19)が、広島戦3勝目となる今季6勝目を挙げた。難しい雨中のマウンド。ポケットの中のロジンバックを何度も触り、スパイクの裏にまとわりつく土も落とすシーンもあった。そんな状況でも、目の前の打者をねじ伏せることに集中。5回4安打3失点と踏ん張った。

「(中断は)初めての経験でしたが、しっかりゲームを作れたのは良かったです。ただ感覚が良かっただけに、2アウトからの失点はもったいなかった。(中断中も)自分は投げる気でいたし、気持ちを切らさずしっかり準備できました」

集中が切れてもおかしくない場面だった。降り続く雨の影響で、開始は1時間9分遅れた。さらに2回終了後に1時間2分の中断。再開後も雨が打ちつけるグラウンド。広島は先発ジョンソンを代え、2番手中村祐を送り出した。それでも才木は3回のマウンドに向かった。先頭の野間を直球で押し込み左飛、菊池は145キロ直球で空振り三振に仕留めた。丸は四球で歩かせたが、鈴木は外角フォークで見逃し三振に斬った。

注目を浴びるのが何よりもうれしい19歳だ。ドラフト候補だった須磨翔風高校3年時。文化祭では行き交う生徒たちから頼まれれば、ツーショットにも応じて回った。1発ギャグの注文を受ければ、鉄板ネタを披露した。今もなお「目立つことは大好きですね」と口にする右腕。難局に立たされても自分が最も目立ち、輝きを放つ舞台は簡単に譲らなかった。

マツダスタジアムでは9月6日に6回1失点と好投し、今季5勝目を挙げていた。この日もリーグ3連覇を目前にしている広島に対して粘り腰を発揮。6勝のうち半分が首位からとは何とも頼もしい。ホープの熱投が、沈んでいた虎を奮い立たせた。【吉見元太】