「剛腕守護神」が、帰ってきた。リリーフに“再々転向”した巨人沢村拓一投手(31)が16年9月8日の阪神戦以来、981日ぶりのセーブを挙げた。

3点リードの9回から登板。わずか11球、3者凡退のパーフェクト投球でチームの連敗を4で止めた。10球投じた直球はオール150キロ超え。149キロの高速フォークも駆使する剛腕スタイルで、苦しむ救援陣の救世主に名乗りを上げた。

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スタンドがざわついた。沢村が小走りでマウンドに向かう。リリーフ再々転向初戦の出番は3点リードの9回。初球、代名詞の153キロ直球で新たな1歩を踏み出した。オール150キロ超えの直球と149キロの高速フォークで3者凡退で締めた。「どこのポジションでもチームのために」。試合後は“チームのために”を繰り返した。

突然の転向も、即座に決断した。15日のイースタン・リーグDeNA戦に先発。3回2失点で降板後、球団関係者を通じ、原監督の意向を聞いた。リリーフ再々転向の打診に「お願いします」と即答。49球を投げた後で体調面を心配されたが、即合流が可能であることも即答。言葉通りに中1日で結果を残した。

言葉は必要なかった。16日の名古屋への新幹線移動。品川駅から乗車し、約15分後に新横浜駅から乗車した原監督の席を訪れた。「頑張ろうぜ」。短い言葉だったが、十分だった。差し出された手を握りかえすと、監督の熱い思いを手から感じた。「チームが勝つために腕を振る」。新幹線の車中、静かに胸の中で誓った。

新たなスタイルも手に入れた。今季はリリーフからスタートしたが、2月のキャンプ最終クールで先発転向。原監督から「窮屈そうに見える」と指摘を受け、投球を見つめ直した。「少ない出力でボールを投げる」脱力投法を習得。制球力とともに、テンポの良さもよみがえった。

試合後、原監督の言葉に期待が表れた。「2点差でも(沢村と)決まっていた。そのために、そういう役割ができるという中で一員になってもらっている」。チームは勝利の方程式が固まらず接戦で苦しんでいる。救世主に浮上した剛腕は「どの場面でも、与えられた使命を果たすだけです」とシンプルな言葉で思いを表現した。【久保賢吾】