楽天ドラフト1位の辰己涼介外野手(22)が「日本生命セ・パ交流戦」阪神戦(甲子園)の延長10回に値千金の決勝打を放った。

無死満塁から能見の142キロ直球を中前へはじき返した。8回には右翼へ大きな飛球を放ち、本塁打だと確信して走らなかったが、浜風に押し戻されてまさかの右飛。ベンチでコーチにカツを入れられる“失態”を犯したが、最後は見事にヒーローに。並みの新人じゃないところを見せつけた。

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辰己が汚名を返上した。同点の延長10回無死満塁。地元兵庫で子供のころからテレビで見ていた能見と対戦した。気後れすることなく、カウント1-1から低め直球をフルスイング。中前へ抜ける決勝の適時打を放った。試合後は「能見さんから打てたのは、これからのプロ野球人生で財産になる」と喜んだ。

それまで不運や自らのミスが続いていた。4回には強烈なライナーを投手に好捕され、8回には豪快なフルスイングからあわや勝ち越し本塁打という右翼への大飛球。「確実にいった」と思い、走らず打球の行方を追ったが、浜風に押し戻されてまさかの右飛に。ベンチでコーチからカミナリを落とされる失態を犯してしまった。

辰己は「柳田さんや糸井さんみたいに、格好良く決めたかったんですけど。あれだけテレビで見ていたのに浜風が頭に入ってなくて、打球が思い切り戻ってきた。あんな恥ずかしいことは2度とないようにしたい」と苦笑い。ただ、怒られた次の打席ですぐさま決勝打を放つところが並みのルーキーじゃない。

プロ入り後、初めてプレーした甲子園。「今までで1番アウェー感があった試合だった。さすが関西人。ヤジだったり、応援だったり、その熱量というのは、同じ関西人として自慢できる。敵ですけど、ええ球団やなと思いました」。だがその上で「そんな中で楽天ファンの方も、僕の打席まで聞こえるような大きい応援をしてくれた。選手とファンが一丸となって勝てた試合だったと思う」。劇的勝利の主人公は、これからもファンとともに前へ進み続ける。【千葉修宏】