広島の「家族」的な雰囲気は、誰かのために動ける赤松真人外野手(37)の存在が大きかったのかもしれない。

レギュラーから代走、守備固めへと役割が変わっても、代わって中堅手となった7学年下の丸へ助言をいとわなかった。勝負の世界でライバルとなる選手への助言を戸惑う記者に「古っ! 今はもうそんな時代じゃないですよ。チームなんですから」と笑った。強がりでも、負け惜しみでもなく、本心だった。

走塁担当コーチの分析と、自身がベンチから見た相手バッテリーの癖や傾向を照らし合わせ、鈴木や野間らの若手に伝えてきた。コーチとレギュラー、そしてベテランと若手の橋渡し役となったことで、新井氏が「家族」と表現した広島の結束力がより強固になっていったように感じる。

胃がんを患ってからは、チームのためだけでなく、同じ境遇にいる人たち、そして支える人たちのためにプレーした。「ちょっとでも僕が勇気を与えられれば」。再びグラウンドに立ち、2軍戦で本塁打も記録した。前例のない戦いで見せた姿に何人の人が胸を打たれ、勇気づけられただろう。最後まで赤松は、赤松らしくプロ野球人生を駆け抜けた。【広島担当=前原淳】