涙の一撃だ。巨人アレックス・ゲレーロ外野手(32)が1点を追う8回に逆転の20号2ランを放ち、試合を決めた。23打席ぶりの安打が5試合ぶりの劇的弾となり、チームは3位以内が確定。2年連続のクライマックスシリーズ進出が決定し、優勝マジックを5とした。最短Vは19日。腰痛からの復帰戦となった先発の菅野智之投手(29)は4回4失点で降板した。

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こらえきれなかった。ゲレーロが決勝のホームベースを踏む直前、右手で目頭を押さえた。1点を追う8回2死一塁。阪神ジョンソンの外角高め151キロを仕留めた。左中間席最深部へ逆転の20号2ラン。うつむいたままナインの祝福を小走りで抜け、ジャビット人形を受け取らずにベンチ裏へ隠れた。「ホームランでの涙は人生で初めて。感動的な一打になった」。32歳の男泣きで劣勢をひっくり返した。

陽気な印象と裏腹に、繊細さを秘める。「キューバ出身だから常に明るいとみんなは思っているけど、落ち込む時は落ち込むよ」。結果が出ず、気分が沈んだ時は1人の時間をつくる。電気を消した部屋でテレビだけをつけ、座り込みながら映画鑑賞にふける。お気に入りの映画はカーアクションが売りの「ワイルド・スピード」シリーズ。気分転換しながら、異国の地で戦っている。

試合前時点で9月は打率1割9分4厘、得点圏では9分1厘と低迷。前日14日広島戦の試合前には早出で打撃練習も敢行したが、サヨナラ機を含む2度のチャンスで凡退した。「昨日は僕が犠牲フライさえ打てなかったから負けた。使い続けてくれたことに感謝したい」。指揮官の信頼に何としても応えたかった。

原監督も涙の1発に「本人もかなり落ち込んでいたという点で、まさに起死回生」と称賛した。試合後、目を赤く腫らしたゲレーロは「早く優勝を決めたいね」とニヤリ。涙はもういらない。リーグ優勝まで駆け抜ける。【桑原幹久】