阪神近本光司外野手(24)が、セ界新人最強のヒットマンとなった。ヤクルト戦(甲子園)の1回に右前打。今季154安打目を刻み、153安打で並んでいた1958年巨人長嶋茂雄のセ・リーグ新人最多安打記録を更新した。チームは敗戦で5位転落となったが、虎のドラフト1位ルーキーが歩んできたヒットロードの輝きは薄れない。

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あっさりとミスターを抜いた。近本は一塁ベース上で、照れながら記念のパネルを受け取った。58年巨人長嶋と並んでいたセ・リーグ新人最多安打記録の更新。61年ぶりとなる1歩も、いきなり初回の右前打で踏み出した。

「記念パネルをいただいた時のファンのみなさんの声援で(新記録を達成した)実感が少しだけ湧きました。いつものヒットとは、また違った声援でした」

プロ入り初の3番起用だったが「深く考えず。初回2死からだったので、3人で終わるのはと思って。しっかりボールも見ながらという感じでした」と目前の打席に集中していた。

飽くなき向上心で、ヒットを積み重ねてきた。春季キャンプやオープン戦で評判通りの打撃を披露し、開幕スタメンをつかんだ。思い出の1本は「一番はじめの、開幕戦のヒット。1本目なので」と即答するほど、脳裏に焼き付いている。3月29日ヤクルト戦の第3打席、右中間三塁打で偉業へのスタートを切った。

6月には「プロの壁」にぶつかり不調に陥った。それでも球宴でDeNA筒香や広島鈴木ら「スーパースター」たちと野球談議に花を咲かせ、復調に成功した。その球宴では第2戦で初回先頭打者本塁打を含むサイクル安打を達成するなど大活躍。ファンを喜ばせ続けてきた一方で、大事なことも心に留めてきた。「いいときもあれば、悪いときもある。自分の大事な部分をできるだけ失わないように」。最大の持ち味の思い切りのあるスイング。「タイミングを合わせてストレートに振り負けないように。調子が悪くなる原因はタイミング。自分の得意なボールが打てなくなると、余計に打てなくなる」。基本の徹底や原点回帰こそ、快挙の源だ。

ミスターを超え、「近本光司」の名を歴史に刻んだ。だが、まだ残り6試合ある。「残り試合どうなるか分からないですけど、自分のできることをやっていきたい」。これまでと同じようにヒットを量産していくだけだ。【真柴健】