「松坂世代」のベテラン左腕が大一番で意地を見せた。ソフトバンク和田毅投手(38)が5回無失点の好投で、巨人菅野に投げ勝った。ルーキー時代の03年以来、16年ぶりに日本シリーズで勝利を飾った。今季は左肩痛から復活を果たし、日本一のかかったマウンドで本領を発揮した。

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涼しい顔で、和田は大男たちに立ち向かっていった。緩急を使ったベテランの味ある投球。3回2死一、二塁のピンチで丸を見逃し三振に斬ると、味方が先制点をくれた。「初回からいけるところまで全力で、と思っていました。優勝が決まる試合の中で投げられたことは幸せです」。5回をわずか1安打で無失点と好投し、日本シリーズでは新人だった03年以来の白星。「そこまで勝てなかったんだな、と不思議な気持ち」と笑った。

昨年は春キャンプ中に肩を痛め、1試合も1軍で投げられなかった。1年以上の長いリハビリを経て、復活勝利を挙げたのが今年6月。勝った方が交流戦優勝を勝ち取る、巨人との最終戦だった。その時に投げ合ったのも同じ菅野だ。この日も「相手の菅野君も素晴らしい投球をしていたので、負けないようにという思いでした」。03年のシリーズでは3勝3敗の第7戦で完投勝利し、胴上げ投手になっていた。送り出した倉野投手コーチの「大舞台を経験している。こういうところで力を出してくれる」という期待に応えた。

「1年間戦力として投げ続けないと意味がない」。復活を期した今春に掲げた目標だった。1軍昇格は6月までずれ込んだが、それからは1度も大きな離脱なく、ポストシーズンまで走りきった。

2軍暮らしの間も、若手の模範であり続けた。前半戦で先発ローテを守り、大学の後輩でもある大竹にはメールなどでアドバイスを送り続けた。戦力になり、1軍に戻ってきても思いは続く。「筑後にはまだ、一緒にリハビリしてきた若い子もいる。和田さんもああやって治ったんだって、励みにしてもらえるような活躍をしないと」。この日の快投も夢を与えた。完全復活して、もっともっと夢を与え続ける。【山本大地】