ロッテは18日、今季から提携する順天堂大で行った新人体力測定の結果を一部公表した。注目のドラフト1位・佐々木朗希投手(18=大船渡)の数値は「メジャー級」と「平均以下」が共存するという意外な結果に。背反する“2人のロウキ”が、国内高校生史上最速163キロの源か。令和の怪物が少しずつ解き明かされていく。

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誰もが気になる「なぜ163キロ?」。学術界の一次見解を知り、ロッテ楠貴彦コンディショニングディレクター兼育成統括(42)は驚いた。

「測定数値に突出したものはありませんが、逆にいうと、それでも160キロ超の直球を投じられることに将来的な可能性、ポテンシャルを非常に感じます」

大人と子ども。“2人のロウキ”が同居している。楠育成統括は「同世代のトップアスリートの中では全ての部位で(筋力が)劣っている」と明かす。それでも163キロを投げる。

肩の動作速度が速くなっても、筋力が落ちない。「力の発揮範囲が広い。ボールを長く、力強く持てることを証明している」。群を抜く垂直跳びには「地面を蹴る力、床反力が強い証拠。上半身の回旋力につながる。この能力は球速に比例すると言われています」と話す。

球速の肝について、楠育成統括は「リリースの瞬間にいかに力を集められるか。集め方は人によってまちまちなので、どれが正解というのはないと思います」と話す。平均以下の「基礎」から、メジャー級の「応用」をたたき出す佐々木朗のメカニズムは奥が深い。

順天堂大との提携は今季からで、蓄積するデータから浮き出るものもあるはず。「新人では今まで見たことがない能力の高さ。弱いところを強化すれば、能力はもっと伸びると思います」。2人が1人になった時、何が起きるか。【金子真仁】

◆フィートポンド トルク(力のモーメント=物体を回転させる力の大きさを表す量)の単位の1つ。力学において、ある固定された回転軸を中心に働く、回転軸の周りの力のモーメントをさす。

◆肩関節外旋筋力の測定 測定機器にひじを置き、腕を横に旋回させ、筋力を測定。ひじ固定時の旋回角度には限界があるため、力の加え方や速度からコンピューターで推算する。単位はフィートポンド。

・180度の場合=佐々木は19・0、メジャー平均値は28・2

・240度の場合=佐々木は19・6、メジャー平均値は25・0

・300度の場合=佐々木は20・2、メジャー平均値は22・8

<順天堂大スポーツ健康科学部・窪田敦之准教授による「肩の筋力」の分析>

肩関節外旋筋力は投手3名の中で最も低く、メジャーリーグの投手を対象とした過去の研究と比較しても低いです。一方でそれらの平均値は、角速度が大きくなると全員筋力が下がっているのに対し、佐々木投手のみ角速度が大きくなっても筋力が高くなっています。もしかしたらこれこそが、高校生の体格・体力で160キロ級のストレートを投じる佐々木投手の特徴かもしれません。より高速下の動作でもちゃんと力を出せるのは、競技力や障がい予防の観点でも重要です。

<順天堂大スポーツ健康科学部・窪田敦之准教授による「足の筋力」の分析>

短縮性の筋力(ハムストリングスなど)と伸張性の筋力(大たい四頭筋など)を測定、数値化し、我々の持つデータに照らし合わせると、100メートルを10秒3程度で走るスプリンターと同等の数値になりました。佐々木選手がまだ高校生で体が成熟していない状況を踏まえると、筋力的にもまだまだポテンシャルがあるのは間違いありません。

○…佐々木朗は垂直跳びは新人トップの73センチをマークした。他の新人6選手の平均63・2センチを大きく突き放す、NBA選手顔負けの数値だった。座位体前屈では新人2位の21センチ。投球時に左足を顔の高さまで上げる、持ち前の柔軟性も実証された。体力測定を終え、佐々木朗は「初めていろいろな筋肉などを計測したりして興味深かったです」とコメント。「弱い部分などをしっかりと把握し、良いところは伸ばして頑張りたい」と意気込んだ。新人合同自主トレは19日から第3クールに入る。