阪神が新人選手へのメンタルサポートとして、日本オリンピック委員会科学サポート部員で大体大の土屋裕睦教授(55)を講師役として招聘(しょうへい)していたことが20日、分かった。同氏は、卓球女子日本代表をサポートした実績がある。人気球団の重圧を背負うドラフト1位西純矢投手(18=創志学園)らルーキーの精神面強化を図る。

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金の卵を守るため、球団が五輪レベルのメンタルサポートに動いた。日本オリンピック委員会科学サポート部員を務める大体大・土屋教授を招聘(しょうへい)。新人選手を対象に、兵庫・西宮市の鳴尾浜ですでに13、19日の2度、講義を行った。阪神谷本修球団副社長兼本部長(55)は「最初にメンタルの柱というか、きっちり向き合う姿勢を身につけてもらうと、今後も変わってくると思う」と意図を説明した。

土屋教授は実践に役立つスポーツ心理学を研究している。五輪の卓球女子日本代表もサポートした実績があるエキスパートだ。人気球団ゆえに重圧がかかり、若手の伸び悩みが近年の課題だ。新人選手に対し、早めのメンタル強化で厳しいプロの世界に順応してもらう。

19日の講義で、土屋教授は目標を思い描くために、色紙に書かせた。ドラフト1位の西純は「1軍で初勝利」と迷いなく記した。実際に専門家の話を聞き、「自分が一番心に残っているのは、目標を持つのと持たないのでは成果が違うという話。100%の目標を持った人は102%の力が出せる。逆に目標を持たなかった人は80%の力しか力が出せない」と胸に刻んだ。初回の講義を聞いた谷本副社長は「面白かったですよ。好評でした。役に立ったと思う人って聞いたら、みんな、手を挙げてました」と興味津々だった。

球団は過去にも短期的にメンタルの専門家を招いていたが、今回は本腰を入れる。土屋教授には、新人合同自主トレ期間だけではなく、シーズン中も講義してもらう方針だ。同副社長は「継続性を高める。3月、4月も、月1ペースくらいです」と話した。シーズン中までメンタル強化を継続する異例の取り組み。昨秋ドラフトでは西純や井上ら甲子園のスターを次々と指名し、話題を集めた。高卒新人は実に5人。金の卵をしっかりと育てるための手を打った。【只松憲】