「立ち投げの映像見たら、びっくりして…」。パ・リーグ一筋21年、捕手として1527試合に出場した日刊スポーツ評論家・田村藤夫氏(60)は、矢も盾もたまらず沖縄に飛んできた。

恩納村でのロッテのドラフト1位、佐々木朗希投手(18=大船渡)の練習に早速潜入。1月11日の新人合同自主トレ取材では、か細く映った若者の変貌ぶりに目を見張った。「特命記者」田村が、ロッテ首脳陣を仰天させた投球の秘密に捕手目線で迫った。【取材・構成=井上真】

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もっと早く佐々木朗を見たかったのでは?

特命記者田村(以下、特命記者) いつブルペンに入るか、読めなかった。それで13日の映像を見て、びっくりして。もう、見るしかないと思ってね。

前日のブルペン入りで、この日は軽めだった。

特命記者 本格的なピッチングが目の前に迫っている充実感かな。1月よりも余裕を感じるね。よく力が抜けたキャッチボールだった。

午前9時半過ぎから黒雲が広がる。天候悪化での練習の時短を予測し、特命記者は手際良く井口監督、鳥越ヘッドコーチ、吉井投手コーチ、清水バッテリーコーチらに、13日の佐々木朗のブルペン投球について、順々に取材した。

特命記者 いろいろ聞いた話を総合すると、どうやら5月にファームで投げる予定みたいだね。1軍はやっぱり夏場かな。

それ以外に何か収穫はありましたか?

特命記者 清水コーチが一昨年までソフトバンクだったから、佐々木のボールをどう表現するかなと。「思わず千賀を連想しました」と言っていた。

高卒ルーキーのブルペン立ち投げで、すでに球界のエース格を連想ですか。すさまじいですね。

特命記者 ボールの出どころが見づらいって。詳しく聞くと、グラブをはめた左手の動きが巧みで、それでリリースポイントが見えにくいと。

やっぱり捕手ならではの視点ですね。出どころは大事ですか?

特命記者 そう、とても大事。私が思い起こすと伊良部が見づらかった記憶がある。速い上に見づらい。これでは打者はタイミングを取るのに相当苦労する。そういえば、清水コーチは捕手の後ろのネット、さらにその後ろにいたけど、投げた瞬間に思わずのけぞったって。それだけ出どころが見づらく、球に威力があるってことなんだろうな。

テンション急上昇の特命記者は、有無を言わさず読谷へと次の進路を定めた。どうして読谷村?

特命記者 ピッチャーの必見が佐々木なら、打者は中日の石川だろう。読谷は昨年までの職場だし、まだバッティング練習に間に合うだろう。急ごう!

打のホープ、中日のドラフト1位石川昂弥内野手(18=東邦)を目指し、恩納村から中日の2軍キャンプ地・読谷村へとレンタカーを走らせた。

◆田村藤夫(たむら・ふじお)1959年(昭34)10月24日生まれ、千葉県習志野市出身。関東第一から77年ドラフト6位で日本ハム入団。81年9月27日の阪急戦で1軍デビューし、世界の盗塁王福本の盗塁を阻止。ロッテ-ダイエーを経て98年引退。ソフトバンクや日本ハムなどでコーチを歴任し、昨年は中日で2軍バッテリーコーチを務めた