“G1”右腕が首位攻防ダービーを制した。巨人の15年ドラフト1位の桜井俊貴投手(26)が、昨季苦手としたDeNA相手に、今季初勝利を手にした。チームの今季最長、自身としてもキャリア最長の8回を投げて2安打1失点。これでチームは4カード連続で負け越しなし。開幕ローテーション最後の1枠をつかんだ右腕が支配した。

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ここが最終コーナーだ。桜井は1点リードの8回2死、打席に梶谷を迎え、一度両腕を上げ、ムチを入れた。外角144キロで見逃し三振に切った。「長い回を投げられてよかった」。キャリア最長、今季チーム最長の8回を悠々と走り抜けた。

ゲートが開き、準備万全で飛び出した。今季はAK-69の「IRON HORSE -No Mark-」を登場曲にした。地方馬がダービーを制するストーリーが歌詞に込められた出ばやしに背中を押されマウンドへ。馬が地面を蹴り上げるようにダートの“馬場”を掘り、8回までの軌跡を築いた。

勝利の裏には、話したくない負けもあった。昨季DeNAには1勝3敗、防御率7・31と苦戦。2番ソトには8打数4安打、3本塁打と打ち込まれた。「去年は去年」と記憶を消し去り3打数無安打。6回1死二塁では内角141キロ直球でバットを粉砕した。

名門ではない。だけど誇る看板がある。高校入学時、報徳学園などの強豪私学から誘いを受けたが、県立北須磨高に進学し「公立の星」と呼ばれた。約10メートル先には甲子園春夏通算19回出場の名門・育英の野球部グラウンドがあった。1日に「都立の星」オリックス鈴木優が、高卒の都立出身者では初勝利。桜井も公立高校球児に夢を与える投球を見せた。

好投しても今は球場にスタンディングオベーションはない。満員のファンが戻ってくるまでレースを盛り上げる。【久永壮真】

巨人原監督(桜井の好投に)「ストライクゾーンを広く使って、メリハリのきいたいい投球でした。これから勝ち星も重ね、お金も稼がなければいけないわけだから、そういう意味では常に挑戦心は持ってもらいたいと思いますね」

◆巨人桜井の登場曲 今季から人気ヒップホップアーティストAK-69の「IRON HORSE -No Mark-」を使用する。誰からもノーマークだった地方馬が、ダービーを制す-。そんな内容が込められた1曲。昨季までは韓国の人気グループBIGBANGの「HANDS UP」を使用していた。