エースは相手打線にも痛みにも負けない。巨人菅野智之投手(30)が7回2失点で、14年以来自身2度目の開幕6連勝を決めた。開幕投手の2度目の6連勝は球団初。他球団でも同条件の経験者は元南海の杉浦忠氏(58年、59年、65年の3度)のみの快挙で球界でも55年ぶり。打球を右足すね付近に受けるアクシデントもありながら、伝統の一戦の初戦を白星に導いた。

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菅野に降板という選択肢はなかった。7回無死、阪神梅野の痛烈な打球が右足に直撃。すぐさまボールを拾い投ゴロとしたが、直後にしゃがみ込んだ。1度ベンチに引き揚げ、テーピングをグルグル巻きにし患部を圧迫。直訴してマウンドに戻った。「最低でも7回投げないといけないと思っている。そこの責任だけは果たさないと」。7回を投げきり、甲子園通算10勝目(2敗)を挙げた。

昨年の苦しみを思えば、屁(へ)でもなかった。昨季は腰痛に苦しめられ、3度の離脱を経験。ボールを投げることさえできない時期もあり「一番つらかった。自分の中では0か100。投げられると思ったら、無理じゃない」。この日の痛みも例外ではなかった。

開幕投手を務めた投手で、球団初となる2度目の開幕6連勝を飾った。過去の開幕投手で開幕6連勝は球団では沢村栄治、スタルヒン、江川卓、斎藤雅樹の1度ずつ。他球団でも、2度以上達成したのは南海の杉浦ただ1人で、55年ぶりの快挙となった。

投手の記録について持論がある。「200勝とかもそうですけど、ピッチャーの記録って塗り替えるのは難しくなっている」。打者は試合数増の影響などで記録更新の可能性はあるが、投手は先発、中継ぎの分業制やローテーション制の確立で記録更新は難しくなった。「だから(達成)回数とかで目指せるところは目指したい」とモチベーションの1つになっている。

原監督はさらなる高みを求めた。「目標はマー君の作ったあれを目指して頑張ってもらってね」と、13年に当時楽天の田中将大が記録した24連勝を引き合いに出した。菅野は「僕だけの力じゃない。今は運良く勝ってますけど、ずっと勝ち続けるのは難しいこと。チームみんなに感謝してまた次のマウンドで仕事をするだけです」。1つ1つ勝ちを積み重ね、歴史を塗り替えていく。【久永壮真】

▽巨人宮本投手チーフコーチ(菅野について) エースは自分の成績だけではなくて、チーム全体も背負っているので、(捕手の)大城なんかも本当に智之と組んで成長している。足に当たった部分もありますけど、責任感を感じました。