日本ハム樋口龍之介内野手(26)が、デビュー戦でプロ初安打をマークした。1軍昇格した23日、西武17回戦(メットライフドーム)に「7番三塁」でスタメン出場。6回1死一塁の第3打席に、右前打を放った。2四死球で3度出塁。チームは接戦を落としたが、身長168センチ、育成出身の小柄なオールドルーキーが大きな存在感を示した。

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捉えた打球を、必死に追いかけた。6回1死一塁。樋口が、プロ初安打を放った。西武宮川の6球目、146キロ速球に、168センチの体をのけぞらせながら右前に運んだ。「ホッとしている感じです」。塁上で196センチのメヒアから手渡された記念球。両手でしっかりと受け取った。

緊張との戦いだった。試合前の円陣では、昇格即声出し役を務めた。「緊張しました。(何を話したか)覚えていないです」と苦笑いも、2回の初打席は四球でチャンスを広げ、清水の先制打につなげた。松本の犠飛で初得点もマークした。

一塁側席には、日本ハムOBで、BC新潟の清水章夫監督(45)が駆けつけていた。樋口は「知っていましたけど全然気付かなかった。期待に応えられて良かった」とひと安心した。

道のりは長く、険しかった。名門・横浜高では1学年上の近藤とプレー。「練習量のレベルが違う。こういう人がプロに行くんだと思った」。力の差を感じ、レベルアップを図るため立正大へ進学した。卒業後もプロ入りを諦めきれず、BC新潟で3年間、鍛錬を積みチャンスを待った。昨年、育成2位で入団。球団初となる育成ドラフト入団からの支配下登録選手となった。

持ち味はパンチ力と確率の高い打撃。2軍では打率3割4分7厘、12本塁打、出塁率4割4分6厘。支配下登録される直前の21日時点で“3冠王”だった。打力を磨くため、楽天浅村の映像を研究。中堅方向へ本塁打を放つ姿に共感しながら「逆方向(の打球は)は、すごいな」とイメージを膨らませてきた。

焦がれていた舞台でフル出場し、4打席で1安打3出塁。試合前、栗山監督から「魂を見せてくれ」と火を付けられ、走塁でも全力疾走した。樋口は「緊張しないタイプ」ながら「目指していたところだったので、さすがに緊張しました」と笑った。遅咲きの新戦力が、夢の続きを走り始めた。【田中彩友美】

▽日本ハム栗山監督「素晴らしかった。一生懸命やったし、緊張感もあったし。ガムシャラにやる感じが、とてもステキだった」