負けられない一戦で「奪三振ショー」を演じた。楽天松井裕樹投手(24)が今季最多12三振を奪い、5回5安打無失点で3勝目を挙げた。毎回得点圏に走者を置き、今季最多114球を要したが、一線は越えさせなかった。先発再転向後初の自身2連勝。チームは2位ロッテにカード3連勝を決め、今季初の5連勝。2・5ゲーム差まで詰め寄った。

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松井は目を丸くした。2点リードの5回。2連続四球を与え、2死満塁。捕手下妻からのサインに「カーブだったので『まじか』と驚きました」。打席はロッテ井上。やや内角低めへの初球、この日2球目のカーブでストライクを奪った。「投手が待っていないなら打者も待っていない。有利に進めました」。2球で追い込み、最後は直球で空振り三振。窮地をしのぎ、力強くほえた。

一戦の重みを感じ、飛ばした。「この試合の大切さは分かっていた。ガス欠になってもいいから、初回から飛ばした」と1回からこの日最速148キロの直球を果敢に投げ込んだ。16球中11球がストレート。いきなり3つの空振り三振を奪った。2回以降も威力十分の直球にフォーク、スライダーを織り交ぜ、目線を変えた。毎回得点圏に走者を背負ったが「ボール1つ1つは悪くない」と自らを信じ切り、5回を投げきった。

ただ、満足はない。お立ち台でインタビュアーから「ナイスピッチングでした!」と言われても「ナイスピッチングではないです」と苦笑いで返した。6試合連続で5回以上を投げたが「最低の中の最低限。5回で引いてしまうのは理想ではないので。まだまだこんなもんじゃないと思うし、自分自身恥ずかしい。そんなところを目指しているわけじゃないので、もっと上を見ていきたい」と、自らへのうっぷんもたまった。

守護神から今季、新人以来の先発に再転向。1歩ずつ階段を上がり、自身初の2連勝を挙げた。三木監督も「チームが連勝の中で絶対やってやろうという気持ちはひしひし伝わった」と闘争心を評価した。「先週に引き続き、みなさんに助けてもらえました。最後の1試合まで気を抜くことなく全力で戦い抜きたいです」と松井。長年9回の修羅場をくぐり抜けてきた左腕が、これから迎えるチームの修羅場で本領を発揮する。【桑原幹久】