失敗は「倍返し」で取り戻した。ソフトバンク周東佑京内野手(24)が、前日のミス負けを挽回するプロ最多タイの4打点で連敗を5で止めた。2回に先制の2点適時打を放つと、3回にも中押しの2点適時打。工藤監督から「晴らさないといけない」と叱咤(しった)されていた男は守備でも魅せ、1日で借りを返した。負ければ2位ロッテに0差に迫られた首位攻防第2ラウンドで鷹の意地がさく裂、再び2差に広げた。

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悔しさをファーストスイングで晴らした。0-0での2回2死二、三塁。周東が中村稔の初球の真っすぐを中前に運んだ。先制の2点適時打。引き分けを挟んだチームの連敗を5で止める一打は、リベンジへの思いがつまった一打だった。

周東 今日は積極的に行こうと決めていた。しっかり初球から打てたので、僕にとっては大きな1本だった。

前日の首位攻防第1ラウンド。2回の守備でゴロ併殺を焦って失策し、大量5失点の要因となった。失策後適時打を放ち、昨年の自己最多25盗塁に並ぶ二盗も成功させたが、勝利には届かなかった。「昨夜は全然寝られませんでした。悔しくて、ずっと自分の映像を見ていました」。眠りについたのはほぼ明け方の午前3時半。睡眠は約4時間半だけで、朝目覚めても「まだ気持ちの整理ができなかった。球場に来てもモヤモヤしていた」という。工藤監督からも「エラーはするが次を大事にしないといけない。晴らさないといけない」と叱咤されていた男は、リベンジを期して打席へ。第1打席の初球を振ることで全てを吹き飛ばした。

3回にも2死満塁から中前へ2点打を放って中押し。昨年4月21日の西武戦(メットライフドーム)でマークした自己最多に並ぶ1試合4打点を決めた。守備でも5回先頭藤岡の中前に抜けそうな打球を逆シングルで好捕。俊足ならではのスピードで追いつき、アウトにしてみせた。「こんな1日はなかなかない。これまで僕のミスがらみで負けていたので、今日1日、やり返せたと思います」。負ければロッテに0差に迫られる危機で再び2差に拡大。ロッテ戦の連敗も4で止めた男が、まさに「倍返し」でヒーローになった。

工藤監督も「打って走って守って、すべてにおいていいプレーを見せてくれた」と頼もしそうに振り返った。9回には「鬼足」を生かして遊ゴロを内野安打にし、今季2度目の猛打賞もマークした。けん制で飛び出しても、挟殺プレーをすり抜けてセーフ。盗塁は失敗したが、最後まで「主役」を演じた。「これからも貪欲にヒット1本、1盗塁、1つのアウトを取っていきたい」。悔しさを味わうほど、周東はたくましくなる。【浦田由紀夫】