犬鷲のエースが復活マウンドに臨んだ。楽天則本昂大投手(29)が首位ソフトバンクを本拠地に迎え入れた。肌寒く秋の訪れが漂う。反して、大詰めに差し掛かるペナントレースは熱気が増す。緊張感が日に日に高まる終盤戦のヤマ場に頼りになるエースが戻ってきた。「本当にまだチャンスがある。全員で力を合わせてやるだけ。そこに自分もしっかりと加わって勝てるようにやりたい」。勝負師の目に力が宿った。

思わぬアクシデントに見舞われた。先発した4日のオリックス戦で3回を投げ終えた後、ベンチ裏で転倒。右手に裂傷を負い、緊急降板を強いられた。翌5日に登録抹消。22日の2軍戦で実戦復帰し、約3週間ぶりに1軍マウンドに復帰した。「試合数も少なくなってきた状況だった。申し訳ないなというのはあった。残り試合が少ないので、これから頑張っていきたいなと思います」とシーズンの残り試合を名誉挽回にかける。

申し分ない復帰舞台が整った。試合前時点で5・5ゲーム差で追う首位ソフトバンク、千賀とのエース対決、チームは3連敗中の窮地、本拠地マウンド。絶対エースとして力の限りをぶつけた。強力相手打線に初回から全開で飛ばした。直球主体で試合に入り、強気に内角を攻めた。1回は22球を要し、2死二、三塁のピンチを迎えるも、最後はデスパイネを4球続けたフォークで空振り三振に仕留めた。

走者を背負う状況が続き、重圧がイニングの経過とともにのし掛かる。4回に川瀬に落ちきらなかったフォークを同点適時打にされる。5回1死一、二塁、栗原に高めに浮いた144キロ直球を右翼席へ勝ち越し3ランを運ばれた。続く松田宣に四球を与えたところで三木監督が腰を上げた。112球。5回途中で則本昂はマウンドから姿を消した。【為田聡史】