キングの目の前で1本差に迫った。阪神の大山悠輔内野手(25)が巨人戦(甲子園)の2回に今村から先制の23号ソロを放った。リーグ最多24本塁打の三塁手岡本のはるか頭上を飛ぶアーチ。主導権をとって今季初の巨人戦連勝に貢献だ。ペナント争いは残り32試合で首位と11・5ゲーム差ながら、主砲はタイトル争いでがっちり食らい付いている。

   ◇   ◇   ◇

大山がゆっくりと、ダイヤモンドを走りだす。今年23度目のスタンドインを見届けながら二塁を回り、岡本が守る三塁へ。1本差に迫った本塁打ランク1位の目の前を表情ひとつ変えず走り抜けた。大事な4連戦の初戦を、ド派手なキング追走弾で勝利に導いた。

0-0の2回先頭。今村の初球、甘く入ったフォークを一振りで仕留めた。「しっかり自分のスイングしようと思っていた」。放物線は今季最多1万5109人のファンの後押しを受け、左翼席中段まで伸びた。カウント別で最多となる4本目の初球アーチ。今季の大山を象徴する積極性が凝縮されていた。今村からは前回9月5日でも1発を放っており、その左腕が「大山警戒」を公言する中、2戦連発をお見舞いした。

広く、本塁打が出にくいとされる甲子園で今季9発目。その姿は聖地を目指し、コロナ禍に泣いた後輩たちにも勇気を与えている。先日、阪神が全国の高校3年生野球部員に贈った「甲子園の土」キーホルダーが母校の茨城・つくば秀英にも届いた。恩師で野球部の森田健文監督は大山に感謝を伝えると「(土を)拾いましたよ!」と元気な返信があったという。喜ぶ部員たちは今オフ、大活躍の先輩に恩返しを計画中だ。

大山弾のたびに「○号」の数字を両手で作り、ベンチで出迎える矢野監督らの姿も恒例になってきた。指揮官は「数字的にも30本とかもっと上の数字が見えてくる。ここまで来てるので、本塁打王を最後に取ってもらいたい」と期待した上で主砲にふさわしい「中身」にも言及した。「悠輔自身もランナーを置いたところで、チームの勝ちにつながるバッティングの延長線上に本塁打があると思っていると思う。そういう形でやってもらえれば」。

大山もそのつもりだ。本塁打王はチームでは86年バースを最後に出ていないが、あくまでも勝利につながる1本の積み重ねを強調する。「試合に勝つ。昨日よりもいい内容にする。いろいろな課題を持って1試合、1試合どう戦うかを考えてやっている。シーズンが終わった時に、いい振り返りができるように」。連勝で巨人と11・5ゲーム差。その背中はまだ遠いが、あと3戦でさらに詰められる。背番号3のキング並走、奪取弾が、チームに勝利を呼び込む。【奥田隼人】