日本ハムが国内フリーエージェント(FA)権を行使したヤクルト小川泰弘投手(30)の獲得に乗り出すことが5日、分かった。今オフはエース有原航平投手(28)のメジャー移籍が濃厚な状況。手薄となる先発陣の補強へ通算75勝を誇り、今季はノーヒットノーランも達成した右腕に白羽の矢を立てたもようだ。2年連続5位からの巻き返しへ、覚悟を持って3年ぶりにFA市場へ乗り出す。

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エースの穴は、エースで埋める。この日、国内FA宣言選手として公示されたヤクルト小川に対して、日本ハムが獲得へ名乗りを上げることを決めた。今オフは有原のメジャー移籍希望を容認し、ポスティング申請をした。エースの流出は必至で、先発補強が課題の中、FA市場に「ライアン」の愛称で知られる経験豊富で実績十分の右腕が登場。3年ぶりにFA選手獲得へ動きだすことになった。

チーム変革の旗手として、期待がかかる。23年春には、北広島市内に新球場「エスコンフィールド北海道」の開業を予定する。移転まで、あと2シーズンと迫る中、現状は4年連続V逸、2年連続Bクラス。栗山監督も「もう1度、長い目で見て『ファイターズはこんなチーム』という特徴を出していかないと」と話すように、強くて魅力的なチームへ立て直すことは喫緊の課題だ。

その中で、これまで掲げてきた「スカウティングと育成」という基本方針と並行して、過去には積極的ではなかったFA補強にもかじを切り、乗り出すことになったもようだ。小川の今季推定年俸は9000万円で、ヤクルト内では人的補償の対象となるBランクとみられる。リスクも承知の上で果敢にアタックを決めたことも含めて、現状打破へ向けた球団の強い意思がにじむ。

23年の新球場開業を見据えて、小川には3年以上の複数年契約を提示するとみられる。ヤクルトからは4年総額7・5億円規模の大型契約を提示され、熟考の末に権利行使を決めたが、宣言残留を認められており、今後は争奪戦に発展する。日本ハムにとって小川獲得が成功すれば、投手のFA選手獲得は球団史上初となり、来季の覇権奪回への道筋も明るくなる。熱意と誠意を持って、勝負する。

 

◆小川泰弘(おがわ・やすひろ)1990年(平2)5月16日、愛知県生まれ。成章では3年春に21世紀枠で甲子園出場。創価大では東京新大学リーグ通算36勝3敗、23完封。最高殊勲選手5度。12年ドラフト2位でヤクルト入団。1年目の13年に16勝を挙げ、最多勝、最高勝率、新人王を獲得。開幕投手4度、球宴出場2度。プロ通算181試合で75勝59敗、防御率3・63。15年プレミア12日本代表。171センチ、80キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸9000万円。

 

◆日本ハムのFA選手獲得 過去に2例ある。04年オフにヤクルトからメジャー移籍を目指してFA権を行使した稲葉に対して05年1月に正式オファー。同2月の春季キャンプ中に入団合意し、球団初のFA選手獲得となった。17年オフにはソフトバンクから他球団移籍を目指して海外FA権を行使した鶴岡を獲得。13年オフに日本ハムから国内FA権を行使して移籍を果たしており、FAで古巣へ戻る球界初のケースだった。