高卒2年目のオリックス宮城大弥投手(19)が西武打線を7回2失点に抑え、今季初勝利をマークした。開幕カードで先発勝利を挙げた球団の10代投手は、阪急時代の1957年(昭32)米田哲也以来。通算350勝を挙げて「ガソリンタンク」の異名を取った怪腕に並ぶ快挙に「思った以上の投球ができた。今日は絶対勝つ、と思ってました」と胸を張った。

8三振を奪ったが、見せ場は4回無死で4番山川を迎えた場面。本能に従った。6度のファウルで粘られた9球目。「スライダーを投げる瞬間に『打たれるかファウルになる』と。勝手にカーブに変えました」。内角低めの114キロカーブで空振り三振に仕留め、膝をつかせた。「江夏の21球」でスクイズを外したカーブのように直感を信じた。「初回にスライダーを打たれた。直球、チェンジアップもファウル。大きく曲がる球は投げてなかった、と」。最速は148キロで最遅は96キロのカーブ。曲がりの大小は自在で、チェンジアップとともにホームベース上の奥行きを操った。

「動物的勘」は幼少期から養われた。中学時代に飼っていたオス猫ブッチは「突然、いなくなって…」。大阪・舞洲の選手寮にはブッチに似た柄がプリントされた枕に加え、「新しく増えましたよ」と就寝時に使う猫形の抱き枕を“飼った”。「動物を触ると癒やされる。(高校の)グラウンドに飛べないハトがいて、そっと木に乗せてあげました。翌日見に行ったらいなかったんですけど…」と逸話には事欠かない。

52歳の誕生日を今季初勝利で祝福された中嶋監督は「球数的に大丈夫かなと。力感を出してたので」と安堵(あんど)した。降板後、高山投手コーチから頭をなでられ、19歳はようやくベンチに腰を下ろした。「顔に出ないだけで、落ち着きはない。うろうろロッカーを歩き回ってます。今日も先輩に『落ち着けよ』と。座ると緊張します」。勝負のマウンドで猫はかぶらない。【真柴健】

◆宮城大弥(みやぎ・ひろや)2001年(平13)8月25日生まれ、沖縄県出身。興南から19年ドラフト1位でオリックス入団。1年目の20年11月6日の日本ハム戦でプロ初白星。1軍では3試合に登板し1勝1敗、防御率3・94。ウエスタンでは6勝を挙げ、最多勝を獲得した。171センチ、80キロ。左投げ左打ち。

◆米田哲也(よねだ・てつや)1938年(昭13)3月3日生まれ、鳥取県出身。56年に境から阪急(現オリックス)入団。抜群の体力から「ガソリンタンク」と異名を取り、57年から19年連続の2桁勝利。68年MVP。阪神-近鉄と移り、77年に引退。通算949試合、350勝(ともにプロ野球2位)285敗、2セーブ、防御率2・91。現役時代は180センチ、87キロ。右投げ右打ち。引退後は阪神やオリックスなどでコーチを務めた。00年野球殿堂入り。