日本ハム立野和明投手(23)がマー君との投げ合いを制してプロ初勝利を挙げた。ピンチの連続だった序盤3イニングを粘りの投球で乗り越えて5回3安打無失点と快投。1軍デビューから3試合目の年俸1000万円右腕が、日米通算180勝の9億円右腕との先発対決でつかんだ待望のメモリアル勝利が、チームにとっては今季72試合目で初の0封勝利となった。

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とびっきりの笑みが弾けた。立野はヒーローインタビューで、誇らしげにプロ初勝利の記念ボールを左手で掲げた。「家族の方に送りたいと思います」。裕福ではなかった少年時代。2歳上の兄と自分、どちらが中学のクラブチームに入るかを家族で話し合って「悩んで、僕に」。高校では腰と左目を故障し、1度は野球を諦めかけた。社会人野球を経てたどり着いたプロでも、1年目は2軍暮らしが続いたが、ずっと周囲に支えられてきた。「やっと…という感じですね。恩返しが今日できたのかな」と、再び笑った。

独特な願掛けをしてまで、こだわってきた真っすぐを軸にして5回までゼロを並べた。春季キャンプ明けの3月に「ストレートに磨きをかけようと思ってストレートパーマをかけました」。最速145キロの力のあるボールを内角にも強気に投げ、スプリットやスライダー、カーブなども生きた。天然パーマから直毛となっていた髪の毛は最近、短く切った。「暑くなってきたので、今回は(パーマを)あてずに切りました」。もう願掛けの必要はないほど、威力十分だった。

マー君との投げ合いにも緊張せず、楽しみにしていた。登板前日には「小さい頃から見ている選手なので、自分の中では楽しみという感じの方が強い。思い切ってやろうという感じです」と言い切った。13年の日本シリーズ第7戦で田中将が最終9回を締めた場面を、よく覚えている。中学3年の時にテレビ画面越しに見ていた舞台が楽天生命パーク。「マウンドに立っているだけで球場の雰囲気を変えられる、すごいピッチャーだとあらためて感じました」と脱帽したが、マウンド上は1歩も引かない精神的な強さも見せた。

立野 相手のピッチャーが田中投手だった。投げ合っての初勝利は、自分の中では特別な勝利です。

栗山監督も「良かったね」と目を細めた快投でチームもシーズン折り返しの1戦を今季初の0封勝利で飾った。「ここからまた1戦1戦しっかり投げていこうと思います」と宣言した立野が、苦しむチームの中で大きな光をもたらした。【木下大輔】