日刊スポーツ東北版で、毎週木曜に楽天情報をお届けする「週刊イーグルス」。第15回は大村三郎ファームディレクター(FD、44)が7月のファームを振り返り、8月の投手・野手各注目選手を挙げた。【取材・構成=桑原幹久】

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【投手】

-7月注目投手の藤平は、7月31日DeNA戦で1年ぶりの1軍登板で2回無失点。6月のミニキャンプで1日400球の投げ込みも

永井育成投手コーチも付きっきりで細かいところも修正していた。ストライクが入れば、真っすぐは1軍でもそんなに打たれない。

-最近は救援登板が主に

1イニングをきちっと抑えてから、伸ばせていければいい。石井GM兼監督も大前提は先発で考えている。ただ、短いイニングがもしかしたら合っているかもしれない。安楽、酒居とかも数を投げているので、割って入る感じでもいい。

-ドラフト6位右腕の内が2軍戦に2試合登板

小さいけがもあったが、順調に回復している。本来ならもう少し試合に投げさせていきたい

-190センチ、88キロと恵まれた体格。オリックス山本にフォームが似ている

基本はいじらずに、という方針はある。ただ、体がまだできてない。どうしても高卒1年目の投手は土台作りからになる。

-特徴は

真っすぐだけだけど、プロの中ではまだ全然強いボールではない。もう少し時間がかかるし、かけてもいい。将来的に強い球を投げられる素材ではある。慌てず、じっくりと見ていきたい。

-フレッシュ球宴でドラフト3位の藤井が登板

真っすぐの質もいいし、ちょっと人と違うチェンジアップもおもしろい。回転数を見てもフォークやナックルに近い。彼も課題はコントロール。高田孝は大卒、藤井は社卒だけど今出てこなくても大丈夫、というビジョンはある。

-石井GM兼監督も「大卒、社卒=即戦力ではない」との考え

幸いに1軍の先発投手陣は充実している。そこに割って入るくらいが本当はいいかもしれない。ただ、今年、来年と誰かがけがをした時にすぐ入っていけるように、ファームで今から準備をしておきたい。

-7月30日DeNA戦で石橋が先発し5回1失点

いつ1軍に呼ばれてもいけると思う。アドレナリンを力にするか、いい方向にもっていけるか。石橋はいい方向に出たと思う。こんなに真っすぐ強かったかなと思うくらい。釜田を含めあの辺のクラスになれば、少ないチャンスをものにしてほしい。

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【野手】

-7月の注目野手のオコエが1軍で結果を出した

やっぱり能力が違う。打球速度も内田よりも全然速い。武藤より足も速いし、年数やっているだけ守備もうまい。武藤ともいい競争をしてくれれば。

-競争相手が増えるとチーム全体に好影響

競争しないと絶対に強くならない。ファームでも結果が出なければ試合に出られない。ずっと出られるよ、と思ったら大間違い。ハングリーさを養ってほしい。そうしないとチームは強くならない。

-打率3割3分8厘でイースタン・リーグ首位打者の育成・山崎真が6月15日以降出場なし

去年右肩を手術して、今も完全ではない。100%になるまで別メニューでの肩のトレーニングを優先した。投げられないとどれだけ打っても1軍で試合には出られない。1軍でDHを打てるか、といえば無理な話。元々ショートで入っているわけだから、ショート、もしくはサード、セカンドを100%の状態で守れるようになってからだと僕は思っている。

-将来を見据えた判断

今だけじゃない。彼には「打つだけじゃ俺は(支配下登録を)反対する」と言った。チームみんなで話し合い、来年、再来年やってくれればいいという判断。彼は去年は1年間野球をやってない。今年は試合に出られて、結果が出て、本当に明るくなった。今は残念に感じているかもしれないが、いい方にとってほしい。

-石井GM兼監督は「作戦実行能力」、特にバントの重要性を説いている。ファームでの意識付けは

ファームでもかなりやっている。三木2軍監督は作戦を重視する監督。1軍以上にやっていると思う。ただ、ファームの選手が1軍でバントを失敗してしまう。環境の変化があるかもしれないし、プレッシャーの中でできるかどうか。ファームではなかなか1軍クラスのプレッシャーを感じることはできないが、選手個々の考え方次第で変わってくる。

-侍ジャパンでも米国戦で栗原選手がタイブレークで送りバントを決めた

あんなプレッシャーがかかる場面でちゃんと一発で成功できる。ああいう選手になってほしい。うちのチームは全員バントの可能性がある。1軍に行ったら余計にある。ファームでも1軍でも、侍ジャパンでの厳しい場面であっても、きっちりと決められるために、精神力、考え方なのか、人それぞれ成功するために必要なことは違う。

-球宴MVPの島内が2軍戦に志願出場

外野で打撃練習を見ていて、やっぱりいいスイングするなと。見て盗んでほしいし、聞いてもいい。ただ、打撃練習を見るだけじゃなくて試合前後にどんなことをやっているのか、若手がちゃんと見てくれていたらいいな、と思う。

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暑さでバテる時期に入ってきた。今はとにかく食べてほしい。僕も現役時代、好調な年は夏場に太っていったし、成績が落ちた時はやせていった。寝る2時間前に食事を終わらせたり、かなり無理矢理食べていたね。夏場に体重が増える選手はいい選手だと昔からよく言うけれど、体調が良くないとどれだけトレーニングや技術練習しても身にならない。そういうケアをしてほしいし、プロ野球選手ならするべき。今は栄養士さんもいるので、やり方はたくさんあると思う。体重を維持するだけでもいい。

◆8月の注目投手 森原康平投手(29)津留崎大成投手(23)

森原は去年より全然いい。質のいい真っすぐを投げるしフォーク、スライダーも良くなっている。去年はファームでも打たれていたが、今年は普通に抑えて帰ってくる。さすがだなと。実績もあるので自信を持ってやってほしい。津留崎は下半身のコンディション不良から復帰して良くなった。故障前は本人にも迷いがあったが、やっと本来の力に戻ってきた。彼本来の縦カット、カーブもいい。楽しみだね。

◆8月の注目野手 内田靖人内野手(26)

ずっと期待をされてきたが、応えられていないことは痛感していると思うし、悔しいと思う。今年はチャンスで打てるようになった。打率が高いに越したことはないけれど、得点圏打率が高くて、勝利打点が多いクラッチヒッターにチームにとって大事。内田は勝負強さを特に求められる役割だと思う。期待に応えるためにはとにかく打つこと。一番簡潔に言えて、一番難しい。能力は持っている。ムラが激しいので、高確率で強いコンタクトができれば1軍でも結果は出る。岩見、(和田)恋、内田の3人は毎年のように期待されている。悲しいかな、まだ3人ともファームにいる。コーチも一生懸命やってくれているので、どうにか結果を出してほしい。