生粋の長距離砲が優勝争いの輪に加わった。巨人中田翔内野手(32)が、故郷・広島で復活の放物線を描いた。2回2死一塁、広島玉村から先制の2号決勝2ラン。大不振での2軍降格からはい上がり、1軍再昇格3戦目で結果を示した。チームを連勝に導く1発で「わっしょいベースボール」に参戦。今日24日からの阪神3連戦(東京ドーム)に向け、勢いをつけた。

    ◇    ◇    ◇

握りしめたバットからの感触が身に染みた。中田が快音を響かせた。同点の2回2死一塁、広島玉村の143キロ直球を捉えた。故郷の秋空へ大きなアーチをかけた。「チームの足ばっかり引っ張っているので、これからもっと打っていけるように、自分のスイングをしっかりしていきます」。丸まりかけていた背筋をピンと伸ばした。

打つか、打てないか。スラッガーの宿命からは逃げられない。打てなかった11日に2軍降格を告げられた。2軍戦は全試合「DH」で出場。阿部2軍監督からは「ミットは持ってこなくていい。バットだけ持ってこい」と言われた。試合前は早出で振り込んだ。休養日は長嶋終身名誉監督から特訓も受けた。イースタン・リーグ6試合で打率5割、4本塁打、13打点をマーク。打ちまくって1軍再昇格をつかんだ。

「長嶋さんも阿部2軍監督も本当にいろんなアドバイスとか、いろんなことを勉強させてもらった。教えていただいたことを意識しながら打席に立ちました。結果が出た上に、勝てたのはすごく良かったなと、今は安心しています」

少年時代から今までもずっとバットで道を切り開いてきた。身を救うのも当然、バットしかない。フォームは倒れていた手首を立てて微調整した。繊細にこだわって259本の本塁打を積み上げてきた。

ときに自らのバットから放った打球で痛手を負うこともある。6回1死一塁での第3打席。左足に自打球を当て苦悶(くもん)の表情を浮かべた。直後の守備からベンチに退いたが「全然、大丈夫です」と大事には至っていない。

「これだけ選手がそろっているチームですから、足を引っ張らないように頑張ってきたいと思います」。中田の思いは、チーム内に染み渡っている。【為田聡史】

巨人ニュース一覧はこちら―>