阪神がマジック1で迎えたオリックス戦に逆転勝利し、3年ぶり17度目のウエスタン・リーグ優勝を決めた。

3点を先制された直後の2回に優勝への執念を見せた。四球と連打で無死満塁とし、江越大賀外野手(28)が外角いっぱいのスライダーを最後は左手1本で右前に落とした。走者2人をかえした。その後江越が盗塁を決め、無死二、三塁となって山本泰寛内野手(27)の中前適時打で同点。4連打であっという間に追いつくと、なお無死一、三塁から暴投で4点目を奪い、試合をひっくり返した。4回も1死一、三塁から板山祐太郎外野手(27)の右前打で1点を追加。救援陣がリードを守り切り、チーム一丸でリーグVをつかみとった。

4月末は最下位で前半戦は勝率5割前後をさまよったが、夏場に転機が訪れた。7月30日のオリックス戦から勝ち続け、9月15日のソフトバンク戦で敗れるまで1分けを挟んで18連勝。99年にイースタン・リーグで巨人が記録した15連勝を抜くファーム最長記録で優勝争いに加わった。最後は2連覇中のソフトバンクを振り切った。

快進撃と同時にファームとしての選手育成も実った。小川一平投手(24)、及川雅貴投手(20)は今や1軍ブルペンには欠かせない存在になった。島田海吏外野手(25)は2軍の前半戦で打率3割4分4厘と打ちまくり、後半戦から1軍に定着。優勝戦線にいる1軍に戦力を送り込んだ。

ドラフト5位の村上頌樹投手(23)は2軍のローテーションを守り、リーグトップの10勝。防御率2・23、勝率9割9厘と合わせ投手3冠を確実なものにしている。4月19日に支配下選手登録を勝ち取った小野寺暖外野手(23)は打率、出塁率の2冠も間近。1軍の舞台も踏んで大きく成長した。将来有望な投打の柱が安定したパフォーマンスを発揮した。

2年目の大砲候補、井上広大外野手(20)は4番として53試合に出場。7月末から17試合連続安打をマークした。8月20日に右足脛骨(けいこつ)を骨折し1カ月間戦線を離脱しているが、50打点は今なおリーグトップ。平田監督は不調時には4番から外し、「4番を奪い取る活躍をしないと」と愛のムチで成長を求めた。

若手が育つ土壌が鳴尾浜にはある。8月28日に行われた四国IL・徳島との練習試合の試合前のこと。2年目の藤田健斗捕手(19)が送球練習をしていると、平田2軍監督から大きな声が飛んだ。「もっとスピードを上げろ! 素早くやれ!」。直後、藤田がボールの握り替えで失敗して手元からこぼしたが、指揮官は「それでいいんだよ」ととがめなかった。「素早くやろうとしてポロリンチョだろ。それでいいんだよ。無難に練習をするな。ここ(練習)で失敗しておかないと課題が見つからないだろ」。自らの肥やしとなるミスなら決して責めない。そんな環境で若手はのびのびとプレーできている。

1軍がセ・リーグのペナントを激しく争う中、ひと足早くウエスタン・リーグを制した。次は、10月9日にひなたサンマリンスタジアム宮崎で行われるファーム日本選手権。3年ぶり6度目の日本一を懸けて、イースタン・リーグ優勝のロッテと対戦する。【前山慎治】