日本ハム伊藤大海投手(24)が1発に泣いた。ソフトバンクとの今季最終戦(ペイペイドーム)に先発。0-0の7回2死三塁、甲斐に先制2ランを浴びた。7回4安打2失点で勝ち負けはつかず、10勝目へ6度目の挑戦もかなわなかった。チームは9回、杉谷拳士内野手(30)の同点打で引き分けに追いつき、土壇場で意地を見せた。

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高まるムードに、あらがえなかった。伊藤は、非情な光景を目に焼き付けるしか出来なかった。0-0で迎えた終盤7回2死三塁。甲斐への3球目、甘く入ったスライダー134キロを捉えられた。「あそこで真っすぐでいけない弱さが…。甲斐さんには真っすぐを、すごく褒めていただいていた。その真っすぐで勝負出来なかったのが、ちょっともったいなかった」。左翼席を見つめ、ゆっくりと視線を落とした。

甲斐の本塁打を呼び込んだベテランの存在を、まざまざと感じた。1死二塁、今季限りで現役引退を発表した長谷川が代打で登場した。「もうすごい雰囲気でしたし、四球と死球だけは絶対にないようにと思って投げた」。自ら球を受けて一ゴロを完成させる際、長谷川は一塁ベースにヘッドスライディング。気迫あふれる最後の勇姿に「僕も初球から声が出るくらい、思い切りいかせていただきました」。7回4安打2失点8奪三振。悔しさは残るが、全力で立ち向かった。

栗山監督は「もう1回行かせる」と、最後の登板チャンスを与えることを明言した。チームは2点を追う9回2死一、二塁。杉谷の左翼フェンス直撃の2点適時二塁打で、土壇場で同点とした。チーム屈指のハッスルボーイが、ルーキーの負けを吹き消した。伊藤は「最後しっかり追いついてくれて、まだ望みはある。何とか次も良い投球が出来るように頑張りたい」と誓った。ルーキーイヤーの最後、来季につながる姿を披露する。【田中彩友美】