プロ野球の春季キャンプで話題の中心は、やはりBIGBOSSだ。16年ぶりに球界に復帰した日本ハム新庄剛志監督(50)が、かつての盟友で日刊スポーツ評論家の森本稀哲氏(41)と、キャンプ地の沖縄・名護でぶっちゃけトーーク! 監督として迎える初キャンプでの奮闘ぶりを、プライベートでの素顔も含めて、余すことなく語り尽くした。【取材・構成=中島宙恵】
──監督として臨む、初めての春季キャンプ。8日阪神との練習試合では初陣を飾った
新庄監督(以下、新庄) ポイントはベンチの雰囲気。(外野手ながら遊撃を守った)五十幡君が抜けたっていう打球を普通に捕った。普段と違うポジションでそういうプレーをしたら、どんだけベンチが盛り上がりましたか?これ、1回で終わっちゃダメ。ベンチの雰囲気が、このまま、ずーっと続いて欲しい。試合に出ない時は、お互いが応援しあう。「持ち味出して~」「持ってるよ~」とか。これが、いいつながりになって「別にオレがベンチにいなくてもいいかな?」って。開幕に近づくほど元気を出してアピールしようと思ってくれたら、オレの勝ち。
森本氏(以下、森本) 無失策ですよ? 何がすごいって、このオーダー(シャッフル守備)を考えた時、どんな監督でも「相手に失礼」「やめておこう」って思いそうなのに、BIGBOSSはやっちゃうんだもん。
新庄 で、勝っちゃう。
森本 試合にならない可能性もあるなんて思っていたら…。
新庄 オーダー発表したやん。場内アナウンスがあった後に、(マネジャーの)岸君から「五十幡君がショートになってるよ?」って連絡があったらしいもん(笑い)。いやいや、ショートで合ってるって。オレは面白いからやっているわけ。でも、マスコミに出す時は「五十幡君がショートに入ることで、外野からどういう返球をすれば(内野手は)捕りやすいか学んで欲しい」っていう後付けはする。
森本 これもBIGBOSSストーリーの一部でしかない。
新庄 (人さし指を口元に)あんまり、言うな。このまま、行くわけないやん。「新庄」だから話題作りで、こうやって楽しませる。勝てば「ふざけんな!」とは、ならない。アンチって結構、いるのかな~?でも、面白いでしょ?
――面白いです
新庄 ふざんけなって思う?
――思わないです
新庄 思ってよ、ちょっとくらい(苦笑)。思ってくれないと、オレの考えには近づいていない。
森本 僕らは思わないでしょ(笑い)。でも、最後は皆が納得する状況になるのが、つーさんのすごさ。阪神には話してなかったんですか?
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新庄 してない。だって、乗ってこなかったもん…オレの餌に(両監督のベンチを入れ替える案)。だから、もういいやって。
――試合ではベンチにいないことも。全体を見やすいからか
新庄 投手の癖をちょっと見たくて。
森本 投手の癖、見られるんですか?
新庄 実は見られるんだよ。(現役時代は)結構、山張りだったのよ?槙原さん(元巨人)とか、大野さん(元広島)と対戦の時は。それで、サヨナラホームランとか打ってた。意外と人間観察が得意で、細かいところ見てるのよ。だから、左打者が間違いなく引っ張れないスイングをしているのに、守っている位置が右寄りだと、少し腹が立つ。そういうところ嫌いで、オレ。誰かコーチが指示してあげないと。
森本 細かいところが出来なくて、最近、下位に沈んでいるので…。
新庄 今年からは新球団やから、やってもらうよ。
――普段の「BIGBOSSあるある」は
森本 まず、値段を見ない。
新庄 あるある。マジ、あるある。でも、バリに住んでいた時は見てた。しっかり見てた。
森本 僕は何度も痛い目に遭っています。ドルガバ(ドルチェ&ガッバーナ)に一緒に行って「これ格好いいし、買え」と。
新庄 稀哲に似合う格好いい服を、オレが合わせて。「これ、お前似合う。買っとけ!」ってカードで払いに行ったら、すごい金額で後に引けないっていうのは何回もある。でも、今になったら、分かるやろ?ファッションにお金をかけていたら、後の仕事につながる。稀哲もオシャレになったのよ。昔なんかもう、お世話になっているメーカーのスポーツブランドしか着ていなかった。
森本 チャンピオンの白い染みつきのパーカーとかを着て、外に行ってご飯を食べてました。
新庄 だから、しっかり洋服に気を使っているオレが一緒に買い物に行って、同じようなものを買って…。稀哲はスタイルがいいから、オシャレをしたら「格好いい」と言われる。そう言われたら、そっちの方向に行くのよ、選手っていうのは。で、活躍しました。さらに見られる。テレビ出演が増える。お金が稼げる。だから今、選手たちに「オシャレをしなさい」と言っている。
森本 つーさん、ニーハイブーツを履いているじゃないですか。「お前履いてみろ」って言われて…。どこで履くの?
新庄 あはははは(爆笑)
森本 ニーハイブーツ履くと、どこにも座れないから。膝が折れないから。
新庄 基本、1回。大事な場面で見せる。1回見せることで、何人の人が見ますか?っていうこと。でも皆は、高い物を買ったら、ずっと使おうとする。それは、分かるんだけど、そうじゃないよってこと。だからオレ、1回着た服は着ないし。カメラが回っていない時は着るけど。それくらいの、こだわりがあるというか、そうしないといけない立場だと思う。
森本 去年の国頭(秋季キャンプ)でも毎回ファッションが違うし、さすがだなと。つーさん、変わってないと思った。
新庄 変わらん、変わらん。オレが何かをすると話題になるから、その話題をファッションにもトークにも広げるというのは心掛けている。でも、す~ごい疲れた…。だって、服、選びに行かないといけないんだもん。その間に、何本も仕事をして…。仕事と仕事の合間の2時間に洋服屋に突っ走って…。だから、1日10万円払ってスタイリストを雇って買い取ることにした。そっちの方が楽だから。
森本 あと、自分がおいしいと思った物は、どんなに遠くても食べに行く。もともと、食に興味はないじゃないですか?
新庄 そうね。朝ご飯とか全然、食べない。「大丈夫ですか?」って言われる。
森本 現役の時も菓子パンだった。なのに、気に入った店には通い詰める。神戸のすし屋で、何故かトウモロコシみたいなのを気に入って…。
新庄 それね、人間でもある。この子かわいいと思ったら、とことんかわいがる。性格の好き嫌いではなく、しぐさや態度。周りに迷惑をかけている選手は「もう、いらない」って思うから、多分すぐ首切る。
森本 そんな力あるんですか?(笑い)
新庄 ん~ない。まだ、ない。まだないけど、力を今…蓄えてる。世間を騒がすことによって、徐々にプラスされていってるから。吉村さん(球団本部長)は常に「好きにしてください。自由にしてください」と言ってくれる。でも、そう言われると、なかなか出来ない性格なの。逆に。オレ優しいから。自分で言うくらい優しい。気を使うもんね。意外と。それ、稀哲は分かっているからいいけど、他の人は分かってないから。ま、分からなくても…。
森本 つーさん、友だち少ないから。「新庄剛志」だから皆、気を使うでしょ?
新庄 気を使うっていうか、テレビの人って見られる。でも、それが、いい緊張感になる。
森本 つーさんに気を使わないって、僕以外にあまりいないですよね?
新庄 いないね。先輩でも、いないね。
――今キャンプはBIGBOSS流で盛り上げている。
森本 監督としてグラウンドでやることすべてに、メッセージと理由を感じる。
新庄 パッと思い付くときと、前もってやろうっていうときがある。ウケないときも、いっぱいある。せっかく考えたのに、記事にならない。
――キャンプ初日には腕時計を2つしていた
新庄 ファッション。話題性だけ。あれ「BIG組」(沖縄・名護キャンプ組)と「BOSS組」(国頭キャンプ組)ですよ。
――2つの場所に時差はありませんが…
新庄 それは、ボケやんな。ボケようって考えてたんだけど、誰からも質問がなかったから、もう次の日から1個にした(笑い)
森本 そういえば、つーさん、ノックは打たないんですか?
新庄 いや~…。
森本 ノック打てないんですか?
新庄 あんまり打てないな~…。
森本 見たいけどな~。
新庄 コソッと練習しようとは思ってるんだけど…。イナちゃん(稲田内野守備走塁コーチ)のノックを見ていたらイライラして。
森本 つーさんがノック打ったら盛り上がる。ミスしても。
新庄 そう?ちょっと練習してみようかな。投げることはもう、出来ないから。
――選手との距離感は慣れた
新庄 距離感は大事。今は結構、選手とコミュニケーションを取っていますね。試合中でも何でも「もっと行け」とか「こっち行け」とか。気が付いた時に言うことに決めたの。これまでは、林ヘッドに言ってもらっていたんだけど。
森本 昔、自然に出来ていたことを、言葉で伝えるのは難しい。
新庄 だから、それは(臨時コーチとして日本ハムの春季キャンプに招いた)赤星君(阪神OB、5年連続セ盗塁王)とか武井君(元陸上10種競技日本王者、タレント)の力を借りている。オレは真面目なことを伝えるのがうまくない人間だから。赤星君を呼んだポイントは、盗塁の技術とかじゃなくて、どんな投手が走りづらかったかを選手たちに教えて欲しかったから。バッテリーは、ものすごく学んだらしい。
森本 本当に走塁を浸透させようとしている。つーさんが監督になったとき、ホームランとかそういうイメージがあったのに。
新庄 いやいやいや、このチームで1番ホームラン打っている打者って何本よって話しなの。それなのに、ホームランを欲しがる。フリー打撃でもオレが見ているとホームランを打ちたがるから、強いスイングじゃなくて、速いスイングをしてって。お願い、もう強いのは分かったらって。
――キャンプの過ごし方も、現役時代とは違う
森本 つーさん、今のように夕方までグラウンドになんて100%いなかった。
新庄 ウオーミングアップが終わって、着替えて、那覇に遊びに行っていたこともあったし。ね?
森本 そういう時もあったけど…。
新庄 真面目か!お前は!毎日、部屋でマッサージしていた。マッサージが終わった後、遊びに行ってた。
森本 僕はつーさんが治療している横で、いつも話しを聞いていました。
新庄 あと、昔はマージャンが出来たから。阪神時代、野村さんに「お前、マージャンしろ」って言われたの。「お前、アホやから、頭を使って人が何を考えているのか勉強しなさい」と。「野村さんやるんですか?」って聞いたら「やらん」って。やらんのかい(笑い)。オレね~、国士無双っていう役満ばっかり狙うのが好きで。場の雰囲気が好きなんです。稀哲みたいに、お酒も飲まないし。
森本 バリに行って、本当に飲まなくなったんですね。昔一緒に住んでいた時は、毎日のように1杯か2杯は飲んでいて。
新庄 飲んだら甘えちゃう。甘えん坊になっちゃう。弱いのよ。あんまり好きでもないかな~。今は外に出ようとも思わんし。
森本 夜は1人で何をしているんですか?
新庄 腕立て伏せ。
森本 部屋で?
新庄 うん。ベッドがないと出来ないから。ベッドに足を引っかけて…。
森本 (爆笑)
新庄 なんで笑うの。1回から始めて、今、2カ月と6日目で66か67回。何回まで出来るか、毎日やっている。そうしたら、胸が出てきた。もうちょっとしたら張りが出てくるから、ユニホームが似合うようになる。洗濯して、いっぱいユニホームを縮めてる。これ、あるある。
森本 それ、あるあるだわ~。現役の時、巨人戦と阪神戦の前は、日サロ行ってウエートして。パンプアップして全国放送に出る。
新庄 日サロに行くと風邪をひかない。だからオレたち、風邪ひくことなかったもんね。
森本 どうして今、球場でウエートやらないんですか?やればいいのに。
新庄 選手に、あまり接近したくない。
森本 選手がウオーミングアップ中は、ウエート室に誰もいないんじゃないですか?
新庄 頭になかったわ。(現役時代)監督がトレーニングしていると「なんか違うだろ」って思っていたタイプ。選手が特打しているのに、監督がランニングしていて見ていないとか、オレ、あんまり好きじゃないんだよね。そういうの。
――現在、夕方までグラウンドにいるのはなぜ
新庄 ちょいちょい休憩しに行ってますよ。時間がたつのが早い。ちょっとだけ「いないといけないのかな」という気持ちになっている。あまり早く上がりすぎてもね…。
森本 つーさんがいると、皆アピール練習になっちゃうんじゃないですか?
新庄 その目的もある。午後6時半、7時半にも室内練習場の電気がついていて、同じ時間に同じメンバーが、ずっと夜間練習をやっている。8日のスタメンは全部、室内で打っているメンバー。使いたくなるよね。でも、部屋でスイングをしている選手もいるかもしれない。
――ずっと横一線を強調しているが
新庄 オープン戦に入ってもオレはBOSS組に行って、(1軍は)林ヘッドに任せたり…というくらいの気持ちは持っている。
森本 第1クール、僕、つーさんの評論やったんですけど、見てくれました?
新庄 見てない。
森本 それは寂しいな。
新庄 最近、新聞の字が読めないのよ。
森本 僕、つーさんが読んでくれていると思って、毎日頑張ったのに!
新庄 ごめん。あの~、新聞の文字、もうちょっと大きくしてくれない?球団のメニュー表も文字を大きくしてもらった(笑い)。オレのね…携帯の字、これ(BIGサイズ)やねん。
森本 でかっ!おじいちゃん!
新庄 視力は1・5~1・2なの。現役の時は2・8あったけど。
森本 サンコンか。(ギニア出身のタレント、オスマン・サンコン氏は昔、視力が6・0だった)
新庄 中堅から捕手のサインが見えるくらいの視力はあった。
森本 サンコンより、ちょっと悪いくらい。
――球界を変えたいと、よく言うが
新庄 結局は、格好付けたいんでしょうね。「オレがプロ野球を変えてやったぜ!」って。オレ色に染めてみたい。メジャーから日本ハムに来た時も、オレ色に染めたかったし「日本ハムを明るいチームにしたオレ、格好いいだろ?」っていうのを見せたかった。稀哲とも運命的な出会いで、オレが日本ハムに入ってなかったら、稀哲はこうなってない可能性もあるよね?
森本 可能性大。
新庄 友だちいなかっただろうし、ずっと反抗期だった。オレが性格を変えた。
森本 うちのオカンが「新庄さんには感謝だね」って言うくらいですからね。
新庄 稀哲を変えたように、今、日本ハムの選手全員を変えたい。稀哲みたいに一緒には暮らせないけど、そういう気持ちはある。だから、今の選手にも稀哲にしていたような声の掛け方をしている。
森本 僕、いまだに言われますよ。「守備位置へ走って行く姿に心を打たれました」って。そんなこと言われるの、うれしいですよね。つーさんが札幌ドームで「ちょっと行こうぜ」って言ったのが始まりだった。僕はレフトで1番だったのでめちゃくちゃ走っていたら、ファンがすっごい喜んでくれた。稲葉さんも走って行くタイプ。
新庄 オレはピョーン、ピョーンって走って行くタイプ。オレは格好いい、速い。あっちゃん(稲葉GM)も速い。いいバランスだったんじゃない?
森本 その辺も演出していくんですか?
新庄 「していこう」って言っているんだけど、まだ、走り方が格好良くないから、格好良く見えない。皆、一生懸命走ってるんだけど。「速く走りなさい!」って言うのがいいかもしれないね。
森本 そういうところを見られていると意識しだすと、変わるかも。
新庄 そうそう。選手は100%ナルシシストじゃないとダメ。「オレは格好いいだろ、見てなさいよ!」という気持ちは、めちゃめちゃ大事。
森本 オレ、顔で売ってないですけど…。
新庄 言わなくていいよ、分かってるから。
森本 自分で格好いいって…。
新庄 思うよね?盗塁を決めたら「見た?」って。これだけで、いいの。好プレーをしたら自分に酔うのよ。そしたら、また次の打席で打てる。野球って線のつながりが大事だよね。でも、チャンスで打てなくて、守備で気持ちが切り替えられない選手は、オレはすぐ代える。
森本 今後、選手たちを開幕までに格好良くしていくBIGBOSSプランは?
新庄 格好良くなるんじゃない?一生懸命プレーする姿が格好いい。ガッツポーズ1つでも。
森本 選手たちも「ボスがあれだから、オレらもやっていいんだよ!」って完全に思ってます。
新庄 思ってるね。これプラスでしょ?今は投手が面白い。会話をして、変化を見ていくのが。「あの子には、こういう風に言えばいいだ」って。オレ、どの世界に行っても、短期間で(他人を)オレの輪の中に入れることが出来るの。オレ、センスあるの。1回話せば、次に会った時、向こうから寄って来るように出来るタイプ。山田さん(バッテリーコーチ)も出来るタイプ。そういう人を(周りに)そろえたいタイプ。
森本 開幕メンバーを決める時も、結果ではなく姿で決める。
新庄 オレのカンピューターで。別に名監督になろうともしていない。選手たちがスターになって欲しいだけ。運命的に出会った選手たちを、成長させてあげたいだけ。それを楽しんでいるだけ。あとは、プロ野球をどうやって変えたら面白いかなっていう楽しさかな?ちょっとずつ、変わってきている気はするんだけどな。