球宴初出場の日本ハム万波中正外野手(23)が史上18人目となる初打席初本塁打を放った。全パが7点リードの7回1死、ヤクルト清水から豪快な1発を右翼ポールにぶち当てた。初打席にも「すごく落ち着いていた」という大物ぶりを発揮。パ・リーグ本塁打ランキング2位の15本と長距離砲として頭角を現している若きお祭り男が、オールスターの場で堂々と存在感を見せつけた。

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どでかいバンテリンドームに、美しい放物線を描いた。万波にとって華々しい球宴の初打席も「楽しめて、周りも見えている感じがした」。自分でも信じられないほどに冷静だった。

7回1死。ヤクルト清水が4球続けたカーブは予想だにしなかった。1球はボール、3球をファウルでかわし、打席で苦笑い。「そろそろ真っすぐが来るかなと。まだか、というのはありましたね」と待ち焦がれた直球がカウント1-2から、ついに来た。外角高めの147キロ直球を逆方向に押し込んだ。

野球人生で「記憶にない」というポール直撃弾に、満面の笑みでダイヤモンドを回った。「映像を見返したら、自分でも見たことのない笑顔だったので本当にうれしかったんだろうな」と、客観視した自分が他人のように見えた。それだけ初球宴の初弾が衝撃的だった。

今季、アーチストへの進化を遂げてきた。交流戦初戦。真価を見せる。5月30日ヤクルト戦、プロ初の2打席連発を披露した。そのまま15本塁打でリーグ2位に伸ばした。記念すべき初球宴で放った1発がアーチ量産へのヒントとなる。

今までに経験したことのない意味のある本塁打となった。「ちょっと新しい感覚だった。押し込むに近いんですけど、ボールの外側を打ったような…。その感覚を、もっとものにできればホームラン数はまだまだ伸ばせる。本当に、いいきっかけじゃないですけど、そういう風につなげていきたい」と学びを得た。

札幌・中島公園の祭りに足を運びベビーカステラを食べるほど、お祭り好きの23歳は「本塁打王は狙って行くか」と問われ「もちろん」と断言。12球団のスーパースターに刺激を受け、若きお祭り男はまたひとつ成長した。【三須一紀】