23年パの首位打者が、甲子園でよみがえった。

1点を追った4回2死。今シリーズで初めて4番に座った頓宮裕真捕手(26)が、阪神伊藤将の143キロ直球を捉えた。2ボールから2球連続でツーシームを空振り。2ボール2ストライクと追い込まれながら、5球目をバックスクリーン左に運んだ。4番弾は値千金の同点ソロになった。

「感触自体も悪くなかったですし、スタンドまで届いてくれてよかったです! なんとか早い段階で同点に追いつくことができました」

先頭の6回は阪神ブルワーから左前打。マルチ安打で、若月の犠飛による5点目につながる好機をつくった。

この日、今シリーズで初めて一塁守備に就いた。9月下旬に左足薬指を骨折。全治8週間の診断で、万全とはほど遠い状態でCSファイナルステージ、日本シリーズへと続く大詰めを迎えることになった。患部には、今も痛みが残る。

だが、出場が決まったときから腹をくくった。試合に出ると決めた以上、泣き言は言わない。たとえ足の状態を聞かれても「絶対に痛いとは言いません」と誓った。覚悟を決めて、走攻守すべてで貢献する思いでグラウンドに戻ってきた。

10月29日の第2戦で、今シリーズ初安打。前日10月30日には甲子園で一塁の守備練習に励んだ。「出たら、守ります」と言いきった通り、4番一塁で先発し、守ってみせた。6回の出塁時に代打・安達と交代し、最後までグラウンドに立つことはできなかった。それでもスタメンで示した存在感。虎党を仰天させた同点ソロで、パの首位打者の打力を存分に示して見せた。【堀まどか】

▼オリックス頓宮が4回に同点本塁打。オリックスの日本シリーズでの本塁打は阪急時代の84年、広島との<4>戦で松永が山根から同点本塁打を打って以降、16本全てが殊勲本塁打(先制4本、同点5本、勝ち越し7本)。日本シリーズで球団別に殊勲本塁打が続けて出た例を見ると、16本連続は2位ヤクルトの7本連続を上回り断然1位。常に効果的な場面で1発が出る。

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