西武から育成ドラフト6位指名を受けた上智大・正木悠馬投手(4年=米レドモンド高)が24日、東京都内の同大キャンパスで指名会見に臨んだ。
来年で創部110年目の上智大硬式野球部で初めてのドラフト指名。「素直にうれしいです」としながら「前例がないということで、自分の結果がすごく大事になってくる。しっかり頑張っていかないといけないなと思っています」と引き締めた。
前例がない-。最速153キロ右腕は日本人としてほぼ皆無の生い立ちを歩んできた。
いや、98カ国からの留学生1800人超を含む上智大生約1万4000人をみても、この歩みを持つ学生はまずいないだろう。
神奈川県生まれ。父の仕事の都合で1歳の時に渡米し、小学校1年生までアメリカで育った。極めて珍しい経験とまでは言えない。
暮らしたのはアラスカ州だ。これはけっこう珍しい。ただ州最大の都市アンカレジでも、主要都市のフェアバンクスでもない。
「オーロラが見える場所? でもないです」
北極ぎりぎりのエリアでもない。
「ダッチハーバーって、分かりますか? 島なんですけど」
地図アプリで検索する。想像を超えた場所だ。アメリカ本土ではない。
極寒のベーリング海に連なるアリューシャン列島の1つ、ウナラスカ島に存在している港湾エリアが「ダッチハーバー」だ。北緯は54度。24日午後の気温は4度となっている。
23日のドラフト会議ではスタンフォード大・佐々木麟太郎内野手(20)が、現地時間の深夜1時過ぎにNPBドラフトの指名を受けたが、日本とダッチハーバーの時差はそれ以上。
10月現在では17時間の時差がある。ハワイよりもさらに西。いまだかつてここまで日付変更線に近接する地で育ったNPB選手はいるのだろうか-。
大多数の日本人とは縁の薄い、遠い遠い島だ。水産関係の仕事につく父が赴任し、家族も同行した。
「島で学校にも20人くらいしかいなくて。もちろん野球ができる環境ではないので、バスケとか水泳とかトライアスロンとか、サッカーとか、いろんなスポーツをやっていました」
生活環境は想像がつきにくい。
「寒いっていうのは当時はあまり分かってなくて。でも家のドアを開けたらキツネがいるとか、カラスのような感じでワシがいる、みたいな。当時はそれが普通だと思ってて。今思えばすごい環境だったなと」
日本に帰国して野球を始めて、また米国赴任に同行して、大学でまた戻ってくる。野球でも150キロを手にするまでの技術的な過程は、ほぼスマートフォン頼りの独学だという。
「でも動画を見るだけでは限界を感じているというか、もう無理だなと思い始めたので。恵まれた環境でやるのは初めてなので、本当に楽しみです」
この島国の野球に何をもたらすか。【金子真仁】
◆正木悠馬(まさき・ゆうま)2002年11月19日、神奈川県生まれの22歳。1歳から7歳まで米在住。帰国後、中2から高3まで再び渡米し、高校卒業時に上智大経営学部の入試に合格した。東都3部で1年春からリーグ戦に登板。変化球はカットボール、ナックルカーブなど。179センチ、83キロ。右投げ左打ち。



