<ロッテ3-4日本ハム>◇11日◇千葉マリン

 「雄星世代」一番乗りで登板し、勝利投手までゲットした。日本ハムのドラフト1位ルーキー中村勝投手(18)だ。ロッテ戦でプロ初登板初先発し、5回99球を3安打6奪三振1失点で投げきった。球団の高卒ルーキー初登板初勝利は、05年のダルビッシュ以来。春日部共栄時代、端正なマスクと長身から“埼玉のダルビッシュ”と呼ばれた右腕が、チームを再び4位に浮上させ、ニューヒーローに躍り出た。

 新星が、飛び出した。中村が「雄星世代」の1番星を、つかんだ。歓喜の瞬間も、高卒新人離れしたマウンドさばきと同じだった。9回2死一、三塁。一打で白星が消滅するハラハラドキドキの場面も「普通に見ていて楽しかった」と傍観していた。2度も「幸せです」と繰り返したが、淡々とかみしめていた。

 強烈な自負を、いきなり体現した。高校時代の異名は「埼玉のダルビッシュ」。端正なマスクと長身の本格派右腕という共通項から、付けられた。ただ抵抗があった。指名直後には「誰かの2世というより、自分自身を売っていきたい」と吐露した。尊敬する先輩だが、オンリー・ワンになるための決意を秘めていた。1回、記念すべきプロ第1球からピンチを迎える。右翼手の落球で無死三塁。「思い切って打者に向かっていこう」と覚悟を決め、四球を挟んだが今江、金泰均、福浦を空振り三振。勝利への扉を自力でこじ開けた。

 西武雄星一色だった昨秋のドラフトでは、その雄星の外れ1位で入団。反骨心は、さらに膨らんだ。球団方針で1月の新人合同自主トレ、2月の春季キャンプは体づくりに専念。雄星と違い、注目されることはなかった。周囲に「僕は雄星とは違うんで(メディアに)取り上げられないんですよ」と本音をもらしたこともあった。親交はないが、どこかで左腕を意識していた。まず先んじても「そういう競争とかじゃない。いい結果になったのはうれしいけど」と、涼しく流せる1歩を刻んだ。

 着実に成長し、チャンスをつかんだ。2軍スタートでも、与えられたメニューを地道に消化。今では高校時代の最速から4キロアップの147キロ、体重も約6キロ増の80キロへと変身した。勝ち気で、実直な性格。男3人兄弟の末っ子。小学校時代から、兄2人と兄弟げんかを繰り返した。田んぼで泥まみれになる取っ組み合いをし、近所の人に“通報”されたこともあるほど負けん気が強いが、野球で一変したという。この日、応援に駆けつけた祖父利男さん(76)に「大事な体でケガをしたらどうする?」と諭されると、ピタリとやめた。

 天性の柔らかいヒジを有効に利用し、この日最速142キロの直球主体に攻めた。「打者に気持ちで負けないようにいこうと思っていました。それがいい結果につながったと思います。ものすごく緊張したわけではない。楽しかった」と言ってのけた。梨田監督が「いいモノを持っていると思ったけどね」と驚く奮闘だった。もう、ダルビッシュ2世ではない。中村勝がプロ野球人生を、自力で堂々と幕を開けた。【高山通史】

 [2010年8月12日8時40分

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